江戸のガーデニング

『花壇地錦抄』5 草花秋之部

『花壇地錦抄』5 草花秋之部 △草花秋之部 「草花秋之部」は62品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。これらを『牧野新日本植物図鑑』などから推測すると以下のようになる。 「白仙翁花」は、センノウ(ナデシコ科)の…

『花壇地錦抄』4 草花夏之部

『花壇地錦抄』4 草花夏之部 ○石竹のるひ 「石竹のるひ」は8品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。これらを『牧野新日本植物図鑑』で確認できたのは、「おらんた」だけである。 「おらんた」は、カーネーション(ナ…

『花壇地錦抄』4 草花春之部・草花夏之部

『花壇地錦抄』4草花春之部・草花夏之部 草花春之部 「草花春之部」には53品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。これらを『牧野新日本植物図鑑』などから推測すると以下のようになる。 「福寿草」は、フクジュソウ(…

『花壇地錦抄』3○冬木之分

『花壇地錦抄』3○冬木之分 ○松のるひ・・・8品 「松のるひ」は8品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。 「松のるひ」として「黒松・赤松・ちやうせん松・唐松・五葉松・ひめこ松・鹿嶋松・霜ふり」の品名がある。以…

『花壇地錦抄』3夏木

『花壇地錦抄』3夏木 ○楓のるひ・・・23品 「楓のるひ」は23品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。「楓のるひ」は、「高雄・八しほ・野村・せいがいは・しやうじやう・楊貴妃・たつた・獨搖楓・大しだり・うすかき・…

『花壇地錦抄』2さつき・梅・桃・海棠・櫻

『花壇地錦抄』2さつき・梅・桃・海棠・櫻 ○さつきのるひ・・・162品 サツキについては、「さつきのるひ」として品名が続く。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。『牧野新日本植物図鑑』には、サツキ(ツツジ科)以外の品名については詳細な種…

『花壇地錦抄』1芍薬/2椿・茶山花・躑躅

『花壇地錦抄』1芍薬/2椿・茶山花・躑躅 ○芍薬のるひ・・・116品 シャクヤクについては、「芍薬のるひ」として「小車・・・」と品名が続く。『牧野新日本植物図鑑』には、シャクヤク(キンポウゲ科)以外の品名については詳細な種の記載はない。 芍薬の品…

『花壇地錦抄』1牡丹

『花壇地錦抄』1牡丹 『花壇地錦抄』は、元禄八年(1695)に江戸近郊の染井の植木屋、伊藤伊兵衛(三之蒸)によって作成された園芸書である。資料として、『花壇地錦抄・草花絵前集』(平凡社東洋文庫・江戸版)、『近世歴史資料集成 第V期(第8巻)園芸【…

江戸時代初期の三園芸書の特徴

江戸時代初期の三園芸書の特徴 『花壇綱目』『花譜』『花壇地錦抄』の三書は、江戸時代初期の園芸書として優れた著作である。三書は、著者の関心の違いによりそれぞれが特徴のある記述がなされている。そこでまず、『花壇綱目』の植物の記述を詳細に見る。最…

伝統園芸の時代背景

伝統園芸の時代背景 日本人が園芸(Gardening)を始めのは有史以前からであろう。それについて具体的な証明をするには、何時・何処で・誰が・何を・何故・どのように(技術等)していたかを示さなければならない。それも個別的な事例ではなく、総合的な視点…

『花譜』の不思議

花譜の植物名6 5『花譜』の不思議 貝原益軒は、『校正本草綱目』の翻刻(1672年)のあと、『花譜』を1694年に作成している。『大和本草』(1709年)や『菜譜』(1704年)の前に作成している。『花譜』からの3書は同時進行であったかもしれないが、なぜ『…

花譜の植物名5

花譜の植物名5 ・「三波丁子」・・・目録および本文にも仮名はない。 「三波丁子」では『牧野新日本植物図鑑』に手がかりがなく、花伝書を見ることにした。 『華道全書』1695年元禄八年に、「三波丁子」がセンジュギク(キク科)であることがわかった。再度…

花譜の植物名4

花譜の植物名4 3 中国の資料を見ていない植物2 ・「蝦根」・・・目録に「エビネ」、本文に「えびね」と仮名が振られている。「蝦根」はエビネ(ラン科)であろう。 エビネの初見は、『資料別・草木名初見リスト』(磯野直秀)によれば、『山科家礼記』(1…

花譜の植物名3

花譜の植物名3 1植物名の表記について 植物名の多くに仮名が振られており、現代名にするのに非常に役立つ。ただ、一部には、目録の植物記載と本文の植物記載が異なっている。 ・たとえば、目録の「山茶木」には「ツバキ」と片仮名が添えられている。本文に…

花譜の植物名2

花譜の植物名2 「桔梗」は、キキョウ(キキョウ科)。 「雞冠花」は、ケイトウ(ヒユ科)。 「槿花」は、ムクゲ(アオイ科)。 「丈菊」は、ヒマワリ(キク科)。 「龍胆草」は、リンドウ(リンドウ科)。 「赬桐」は、ヒギリ(クマツヅラ科)。 「紫苑」は…

『花譜』の植物名

『花譜』の植物名 『花譜』の植物名を記されている順に示す。資料として、国立国会図書館デジタルコレクションおよび中村学園貝原益軒アーカイブに記されている『花譜』関連書、『牧野新日本植物図鑑』、『樹木大図説』などを使用する。 「梅」は、ウメ(バ…

十七世紀の園芸植物分類

十七世紀の園芸植物分類 植物名を知る 花材や茶花の名前をどのようにして知ったのか。現代であれば、植物図鑑やインターネットで容易に調べることができる。十六世紀に生きた人たちは、わかりやすい植物図鑑や書籍を見ることはできなかった。植物の名は、周…

十六世紀の植物名について3 初見の検討

十六世紀の植物名について3 ・蜜柑 ミカン(ミカン科)・・・総称名・・・ミカンの初見→看聞御記1419年 ・鼠尾草 ミソハギ(ミソハギ科)・・・種名・・・ミソハギの初見→本草和名918年頃 ・茗荷 ミョウガ(ショウガ科)・・・種名・・・ミョウガの初見→本…

十六世紀の植物名について2

十六世紀の植物名について2 十六世紀の植物として300程の名前をあげたが、選び方によって300以上になる。ここでは、花材や茶花として使用されないと思われる植物(和布ワカメなど)は除いている。 また、知識不足で読めない漢字や現代名を確定できない植物…

十六世紀の植物名について

十六世紀の植物名について 十六世紀に記された花材と茶花の植物名を調べている中で、当時の名前を記した資料を参考に見直したい。その資料として、『尺素往来』『古本節用集』『新撰類聚往来』を調べる。 『尺素往来』 『尺素往来』は、文明十三年(1481)以…

十六世紀以前の花材と茶花

十六世紀以前の花材と茶花 花材と花伝書 『花道古書集成』『続花道古書集成』に記された花伝書の成立時期を見ると、『仙傅抄』が1445年で、次が一世紀後に『池坊専應口伝』(1543年)、『続華道古書集成』の『花伝書』(1567年)となる。さらにその次は、165…

十六世紀以前の花材

十六世紀以前の花材 ★十五世紀の花材 生花の花材、さらには茶花を加えて、日本人がどのような花を飾ってきたかを知りたい。そのような資料として、花伝書は最も適していると考えられる。「生花」が成立した当時の花材(http://blogs.yahoo.co.jp/koichiro194…

花道書作成・刊行・写書時期の整理

花道書作成・刊行・写書時期の整理 『続華道古書集成』と『花道古書集成』に記された花道書を作成順に整理する。まず、『花道古書集成』の花道書の作成時期を示す。 ★『花道古書集成』花道書の作成時期 ・第一巻 『仙傳抄』は、文安二年(1445年)の作成とす…

「いけばな」成立期の花材

「いけばな」成立期の花材 『華道古書集成』『続華道古書集成』を中心にどのような植物が花材に使用されてきたかを見てきた。その他にも、『山科家礼記』のように数多くの花材が記された資料がありそうである。そこで、立花・生花が成立したとされる室町時代…

『続華道古書集成』全五巻の花材1

『続華道古書集成』全五巻の花材1 花材数 『続華道古書集成』全五巻に記された、『華嚴秘傳之大事』『極儀秘本大巻』『立花全集』『華傅書』『花書』『唯可順生花物語』『挿花てことの清水』『東肥群芳百瓶』『華伝書』『小笠原花傳書』『生芲傳』『立花聞…

『花道古書集成』全五巻の花材の呼称名2

『花道古書集成』全五巻の花材の呼称名2 同じ名(漢字)で異なる植物を示す例 同じ呼び名で異なる種の植物を指す花材名、同じ漢字で異なる種の植物を指す場合がある。総称名とした花材名は、いくつかの植物名を含んでいるが、それらは同じような植物(同じ…

『花道古書集成』の花材の呼称名1

『花道古書集成』の花材の呼称名1 総称名について 『花道古書集成』全五巻に記された、『仙傅抄』『池坊専應口傳』『替花傳秘書』『立花初心抄』『立花大全』『立花正道集』『抛入花傳書』『立花指南』『立花秘傳抄』『立花便覧』『古今茶道全書二』『當流…

『花道古書集成』第五巻の花材

『花道古書集成』第五巻の花材 『活花圖大成』 『活花圖大成』は、『華道古書集 第一期第五巻』の最初の書で、吉尾泰雅によって作成され寛政元年(1789)に刊行された。花材は、二巻に分けられた77図に70程記されており、その内60種を現代名にした。新しい種…

『花道古書集成』第四巻の花材

『花道古書集成』第四巻の花材 『瓶史述要』 『華道古書集 第一期第四巻』の最初の花伝書は、明和七年(1770)に刊行された『瓶史述要』である。『瓶史述要』は、新たな花材がなく、花材数が少ないので検討(現代名の確定、茶花との考察などは、花材数が50程…

『花道古書集成』第三巻の花材

『花道古書集成』第三巻の花材 『抛入岸之波』『生花正意四季之友』 『華道古書集成 第三巻』の最初に、『抛入岸之波』がある。『抛入岸之波』は元文五年(1740)に「初春筆を雪窓の下に揮」とあり、寛延三年(1750)刊行とされている。この書は、『華道古書…