和のガーデニング はじめに
環境緑化新聞への連載を2014年12月で終了することで、これまで記した内容を整理補足し、順序立てて示す。
環境緑化新聞への連載を2014年12月で終了することで、これまで記した内容を整理補足し、順序立てて示す。
はじめに
「和のガーデニング」を薦めようと決意したのは、ドイツの造園家を都内の公園に案内したことによる。夕方に近づいた昭和記念公園で、彼はカメラをバックにしまい、不満そうな表情をあらわにした。朝から見学したので疲れたためかと思ったが、そうではなかった。それは、午前中に見た日比谷公園を含めて、彼が期待した日本らしさを見つけることができなかったからである。
「和のガーデニング」を薦めようと決意したのは、ドイツの造園家を都内の公園に案内したことによる。夕方に近づいた昭和記念公園で、彼はカメラをバックにしまい、不満そうな表情をあらわにした。朝から見学したので疲れたためかと思ったが、そうではなかった。それは、午前中に見た日比谷公園を含めて、彼が期待した日本らしさを見つけることができなかったからである。
見学公園を選んだ理由は、最も有名で歴史もある日比谷公園、都内最大で充実した昭和記念公園なら参考になるだろうと思った。しかし、ドイツの専門家にとって、昭和記念公園の入口のカナールなど西欧の整形庭園の模倣であり、わざわざ日本に訪れて見る価値はなかった。渓流広場にいたっては、キューケンホフやヒュロート・ベイヒャールデンを知っているプロの目には、二番煎じ以外の何ものでもない。日比谷公園においても同様、あえて言うに及ばない。
以前にも、外国人には、日本の公園は西欧の真似が多く、日本らしさが感じられないと告げられた。まず、公園を初めとして、街中に植えられている植物は外来種が多い。特に、街中の花壇は、ほとんどが外来植物で飾られている。よその国に訪れたら、自国で見ている花より、日本でしか見ることのできない花を、それも和風のデザインで見たい。中には、日本には美しい花の咲く植物はないのかと質問する外国人さえいる。
その質問に対し、日本は世界で最も草花の種類が多くあり、日本ならでは美しい花が四季折々咲いていると答えた。「では何故植えないのか、植栽することが難しいしいのか」と畳み込むように問われた。高山植物のように、都会では鉢植でしか栽培しにくい植物はある。が、困難な理由は、造園家が在来の草花について、詳細な生態を知らないからである。それなら、「日本の園芸家や造園家はもっと研究すべきだ」というお叱りまで受けた。その通りで、実際の観察をしていないで書かれた、孫引きと思われる記述が少なくない。四季折々に楽しめる花壇をつくるには、開花期間はどのくらいか、同じ一輪が何日咲き続けるか、複雑な花の咲き方など、植物が芽を出し枯れるまで知る必要がある。
しかし、問題は技術的なことより、現代の日本は、自国の花を大勢の人が訪れる場所に植えようとする気運がないことを付け加えた。日本人は園芸・造園技術者を含め、目新しい西欧などからの花に憧れ、江戸時代から生育する花にはあまり興味がない。そして、日本人は、日本人が好む花(景色)は、外国人も見たい花(景色)であるとを勘違いしていると、説明した。すると、それならあなたが先頭に立って是正すべきと、激励された。これが、「和のガーデニング」に取り組んだきっかけでもある。
まず始めたのが、日本らしい花や植物の景観を探すこと、そして機会のあるごとに外国人に紹介している。彼らは、初めてみる景色に感動し、他にも美しい花はないかと聞いてくる。残念なことに、外国人が訪れやすい場所にそのような景観は少ない。できれば、我国を代表するような場所の一角には、日本ならではの植物景観を実現させたいと願うのである。それには、在来の植物をいろいろな場所に植え、その生態を観察しなければならない。さらにデータを積み重ねたいと思っており、賛同者の増えることを期待したく、和のガーデニングを書くことにした。
(以上は、環境緑化新聞http://www.interaction.co.jp/publication/news/ 12月15日号掲載に掲載したものに写真を加え、編集したものである。)