茶花と花材の植物名その16
茶会記や花伝書に記された植物名を整理する。茶花や花材として記された名称は、当時の呼び名であり、必ずしも現代名と同じではない。また、同じ植物と思われるものにも、いくつもの名前が書かれている。その上、書かれている名(漢字で記された)の読み方も何通りかあり、混乱している。そこで、茶花と花材にどのような呼び名があったかを、現代名の五十音順に示している。
現代名としては『牧野新日本植物図鑑』(北隆館)を基本にし、『樹木大図説』(有明書房)を補足的に使用する。なお、その他の資料として、『資料別・草木名初見リスト』(磯野直秀)、『明治前園芸植物渡来年表』(磯野直秀)を参考にした。
茶花と花材の名称を再度検討する際、これまで不明であった植物の現代名が明らかになり、錯誤もいくつかわかった。その結果、以前に示した茶花や花材の名前が変わり、花伝書の花材数や種類にも変化が生じた。そのため、以下に示す植物名を全て示した後、花伝書の各々について再度整理する予定である。
茶会記や花伝書に記された植物名を整理する。茶花や花材として記された名称は、当時の呼び名であり、必ずしも現代名と同じではない。また、同じ植物と思われるものにも、いくつもの名前が書かれている。その上、書かれている名(漢字で記された)の読み方も何通りかあり、混乱している。そこで、茶花と花材にどのような呼び名があったかを、現代名の五十音順に示している。
現代名としては『牧野新日本植物図鑑』(北隆館)を基本にし、『樹木大図説』(有明書房)を補足的に使用する。なお、その他の資料として、『資料別・草木名初見リスト』(磯野直秀)、『明治前園芸植物渡来年表』(磯野直秀)を参考にした。
茶花と花材の名称を再度検討する際、これまで不明であった植物の現代名が明らかになり、錯誤もいくつかわかった。その結果、以前に示した茶花や花材の名前が変わり、花伝書の花材数や種類にも変化が生じた。そのため、以下に示す植物名を全て示した後、花伝書の各々について再度整理する予定である。
ヤナギ(ヤナギ科)・・・総称名・・・ヤナギの初見→懐風藻705年前
柳=ヤナギ・・・『仙傳抄』1445年(文安二年)に記される。
ヤナギ=ヤナギ・・・『山科家礼記』1491年(延徳三年)に記される。
楊柳=ヤナギ・・・『替花傳秘書』1661年(寛文元年)に記される。
青桝=垂絲柳=人柳=糸柳=八千代草=河高草=風無草=ヤナギ・・・『立花秘傳抄』1688年(貞享五年)に記される。
ヤハズソウ(マメ科)・・・種名・・・ヤハズソウの初見→草木弄葩抄1735年
矢筈=ヤハズソウ・・・『立花初心抄』1675年(延宝三年)に記される。
ヤブコウジ(ヤブコウジ科)・・・種名・・・ヤブコウジの初見→万葉集785年前
山しきみ=ヤブコウジ・・・『仙傳抄』1445年(文安二年)に記される。
山橘=ヤブコウジ・・・『池坊専應口傳』1542年(天文十一年)に記される。
山たちはな=ヤブコウジ・・・『天王寺屋会記』1558年(弘治四年)に記される。
やぶかうじ=ヤブコウジ・・・『立花正道集』1684年(天和四年)に記される。
薮柑子=ヤブコウジ・・・『挿花千筋の麓』1768年(明和五年)に記される。
ヤブラン(ユリ科)・・・種名・・・ヤブランの初見→用薬須知1726年
ヤマスケ=ヤブラン・・・『山科家礼記』1491年(延徳三年)に記される。
観音草=ヤブラン・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
ヤマアジサイ(ユキノシタ科)・・・種名・・・ヤマアジサイの初見→合類節用集
鴨尿草=ヤマアジサイ・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
山あちさい=ヤマアジサイ・・・『華道全書』1717年(享保二年)に記される。
ヤマブキ(バラ科)・・・種名・・・ヤマブキの初見→万葉集785年前
山吹=ヤマブキ・・・『仙傳抄』1445年(文安二年)に記される。
ヤマフキ=ヤマブキ・・・『山科家礼記』1491年(延徳三年)に記される。
山ぶき=酴醿=ヤマブキ・・・『替花傳秘書』1661年(寛文元年)に記される。
茶蘼=ヤマブキ・・・『立花指南』1688年(貞享五年)に記される。
棣棠花=地棠花=面影草=かかみ草=ヤマブキ・・・『立花秘傳抄』1688年(貞享五年)に記される。
ヤマホウズキ(ナス科)・・・種名
山鬼灯=ヤマホウズキ・・・『立花大全』1683年(天和三年)に記される。
山茨菰=ヤマホウズキ・・・『立花秘傳抄』1688年(貞享五年)に記される。
ヤマモモ(ヤマモモ科)・・・種名・・・ヤマモモの初見→新撰字鏡900年頃
楊梅=ヤマモモ・・・『替花傳秘書』1661年(寛文元年)に記される。
ユウガオ(ヒルガオ科)・・・種名・・・ユウガオの初見→枕草子1001年頃
夕かほ=ユウガオ・・・『天王寺屋会記』1579年(天正七年)に記される。
瓠瓜花=ユウガオ・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
夕顔=ユウガオ・・・『立花訓蒙図彙』1695年(元禄八年)に記される。
壺慮=夕がほ=ユウガオ・・・『生花枝折抄』1773年(安永二年)に記される。
ユキノシタ(ユキノシタ科)・・・種名・・・ユキノシタの初見→日葡辞書1603~4年
雪の下=ユキノシタ・・・『立花正道集』1684年(天和四年)に記される。
石荷=ユキノシタ・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
虎耳草=ユキノシタ・・・『生花枝折抄』1773年(安永二年)に記される。
ユキヤナギ(バラ科)・・・種名・・・ユキヤナギの初見→花譜1698年
庭柳=ユキヤナギ・・・『山科家礼記』1491年(延徳三年)に記される。
米柳=ユキヤナギ・・・『池坊専應口傳』1542年(天文十一年)に記される。
岩柳=ユキヤナギ・・・『替花傳秘書』1661年(寛文元年)に記される。
石莧=ユキヤナギ・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
雪柳=ユキヤナギ・・・『古流生花四季百瓶図』1778年(安永七年)に記される。
ユスラウメ(バラ科)・・・種名・・・ユスラウメの初見→日葡辞書1603~4年
櫻桃=ユスラウメ・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
桜棠=ユスラウメ・・・『抛入花薄精微』1796年(寛政七年)に記される。
櫻桃=ユスラウメ・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
桜棠=ユスラウメ・・・『抛入花薄精微』1796年(寛政七年)に記される。
百合=ユリ・・・『池坊専應口傳』1542年(天文十一年)に記される。
夜合花=ユリ・・・『挿花四季枝折』1794年(寛政五年)に記される。
夜合花=ユリ・・・『挿花四季枝折』1794年(寛政五年)に記される。
リンドウ(リンドウ科)・・・種名・・・リンドウの初見→古今和歌集914年頃
龍膽=リンドウ・・・『池坊専應口傳』1542年(天文十一年)に記される。
りんたう=リンドウ・・・『天王寺屋会記』1556年(弘治二年)に記される。
くだに=おもひ草=リンドウ・・・『立花秘傳抄』1688年(貞享五年)に記される。
レダマ(マメ科)・・・種名・・・レダマの初見→毛吹草1645年
暮珠=レダマ・・・『抛入花薄』1767年(明和四年)に記される。
れたま=レダマ・・・『立花指南』1688年(貞享五年)に記される。
鷹爪=レダマ・・・『生花百競』1768年(明和五年)に記される。
列珠木=レダマ・・・『生花枝折抄』1773年(安永二年)に記される。
連珠=レダマ・・・『古流挿花湖月抄』1790年(寛政二年)に記される。
レンギョウ(モクセイ科)・・・種名・・・レンギョウの初見→松平大和守日記1666年
連翹=レンギョウ・・・『隔蓂記』1652年(慶安五年)に記される。
れんぎやう=レンギョウ・・・『立花正道集』1684年(天和四年)に記される。
連玉=レンギョウ・・・『立花訓蒙図彙』1695年(元禄八年)に記される。
連きやう=レンギョウ・・・『挿花千筋の麓』1768年(明和五年)に記される。
連堯=レンギョウ・・・『生花枝折抄』1773年(安永二年)に記される。
連喬=レンギョウ・・・『古流生花四季百瓶図』1778年(安永七年)に記される。
レンゲツツジ(ツツジ科)・・・種名・・・レンゲツツジの初見→蔭凉軒日録1488年
れんげつつじ=レンゲツツジ・・・『立花正道集』1684年(天和四年)に記される。
連花つつし=黄躑躅=羊不喫草=レンゲツツジ・・・『立花秘傳抄』1688年(貞享五年)に記される。
蓮躑躅=レンゲツツジ・・・『立花便覧』1695年(元禄八年)に記される。
ロウバイ(ロウバイ科)・・・種名・・・ロウバイの初見→温故知新書1484年
らうはい=ロウバイ・・・『山科家礼記』1492年(延徳四年)に記される。
臘梅=ロウバイ・・・『生花百競』1768年(明和五年)に記される。
ワレモコウ(バラ科)・・・種名・・・ワレモコウの初見→源氏物語1007年頃
われもかう=ワレモコウ・・・『替花傳秘書』1661年(寛文元年)に記される。
吾木香=ワレモコウ・・・『抛入花傳書』1684年(貞享一年)に記される。
我毛香=ワレモコウ・・・『立花便覧』1695年(元禄八年)に記される。
地楡=ワレモコウ・・・『挿花千筋の麓』1768年(明和五年)に記される。