次期作戦模索中、敵機は「偵察・連襲・掃射・謀略ビラ」

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)465

次期作戦模索中、敵機は「偵察・連襲・掃射・謀略ビラ」

 七月六日の読売新聞は「敵航空攻勢の新模様」を「南九州の征空狙ふ」として、「基地整備に焦慮」と「次期作戦模索」とある。大陸基地については、「歴戦の地に堅壘」「大陸の我が邀撃態勢完璧」としている。一方、「国内戦場に備ふ軍需生産」について「統制技術高度化」「生産行政の一元化徹底」をとの記事。これまでも同じようなことを提言していた。他の記事も同様、本土各地に敵機が「偵察」「連襲」「掃射」や「謀略ビラ」などが報告されている。

 朝日新聞は「決戦施策への展望」と、政府が急迫する本土決戦の事態への対応を記している。

 飯田に疎開している風太郎、「この地方は午後十時以後は絶対消燈たり。一寸の灯も外に洩るるときは、戸外より叫び、叱り、はては電球をも持ち去る騒ぎなり。田舎にては警報伝達ややもすれば 遅れがちにて、敵機通過ること多しときけばこれも無理はなし」と。なお、「わが借りたる部屋は中二階の七畳という奇怪なる部屋にして、電燈もなし。迂闊にも来るまでこのことに気づかざりき。されば夜は闇中無聊に苦しむ」と。

頑張り抜かう決戦食生活

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)464

頑張り抜かう決戦食生活

 七月五日の読売新聞は「敵の次期作戦を衝く」の見出しに、「本土猪突・撃滅のみ」と、「石橋叩く戦略圏拡大」「まづ〝火勢攻勢〟徹底化へ」と。これまで戦闘成果を報告するだけであったのが、わが軍の方針を明らかにしている。

 他に、バリツクパパンで「夜間斬込み敢行」「更に舟艇三隻撃沈」などがある。国内では、「中小都市の暴爆激化 29二百五十機」の記事。また南村の「一億国民に激す」は、「必勝の道皇道経済 特攻日本魂に徹せよ」とある。

 二面に「頑張り抜かう決戦食生活」と「よく噛めば噛むほど 少ない量でも満腹」栄養は青菜や木の葉で攝れ」と。「一億耐乏・勝利への〝任怨〟」「端境期を越せば復活に確信」と続く。

 朝日新聞は「夜間斬込みで猛威 彼我対峙し激闘」と、バリツクパパンでの戦いを壮絶に記しているが、夜間の切り込みの決行は無理な戦いを連想させる。

 二面には、「一割減と食生活新設計」と、対策を示している。

主食糧の配給量 一律一割節減

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)463

主食糧の配給量 一律一割

 七月四日読売新聞は、バリツクパパン「戦車を揚陸・敵増強」「皇軍夜襲反撃」の記事。「主食糧の配給量 一律一割節減「大都市では八月十一日から実施」とある。他に、純正法理論著者の南村清二の「一億国民に激す」恐るべし欧米模倣 苦戦の根源ここに発す」との論を掲載している。

 二面に「殲滅せよ心中の敵」「闇」と、「配給生活の確立と」「断乎たる処罰を」「一人の不心得、決戦経済に関わる」と。他に、「若き学徒科学者を護れ」「伸ばせ研究成果 隘路は国家の力で打破」との提言。だが、研究したくても求められるのは、「学徒だけで〝入魂の翼〟」と「決戦場へ結ぶ勝利の学校工場」勤務である。

 朝日新聞も「第一線陣地を確保 バリツクパパン敵、強引の補給増強」と、「肉攻で敵を圧迫」とあり、有利な戦いとは言い難いのでは。また、「主食糧一割減」もある。

 地方都市への空襲が本格化している中、古川ロッパの慰問公演は続いている。戦況の劣勢は肌身で感じているのだろう。さらに、戦後の話も出始めている。古川ロッパの四日の日記には「鈴木氏の話では、東京の復興──家を建てるのは、早くてかかるだろう、震災時と違って資材が来ないから──といふことだ。僕は又、楽天主義なのだな、なアに、二三年で建つといふ気がする。さんざ、此のオプティミズムでは、馬鹿を見てゐるくせに、まだまだ此の根性は抜けない。鈴木氏、ドイツの負けてからの惨澹たる生活を話して呉れた。ベルリンの女は六割、ソ聯の兵隊に凌辱された」と、ロッパは暗に敗戦をも視野に入れているかもしれない。

 

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)462

敵バリックパパン上陸

 七月三日朝日新聞は「バリックパパン敵上陸」、兵力五千、舟艇二百数十隻と激戦展開中と。

 読売新聞も「バリックパパンに 敵遂に上陸を開始」「わが空陸部隊激戦中」とある。なお、その前部に「感狀 上聞の榮え」として「比島海域に敵激撃 盡忠大義に徹す 特攻隊百六十六神鷲」が掲載されている。被害・劣勢の記事は、「B29中都市を夜間分散暴爆」「呉に約八十機来襲」「熊本へ六十機」などと続く。

 二面には、「翼の地下工場」「警報知らぬ工員 公尻目に生産鰻上り」の記事。山岡荘八の従軍記下に「民族の光・特攻隊 独自の底力今ぞ発揮」がある。他に、「鱒の大漁」。「職域食堂で昼食 来月から官公署、会社に設置」などがある。

 高見は、「金龍館の地下室へ行く。今日は先日ほど混んでいなかった。立って、ビールを飲んだ。足もとに水が溜っていて、気持が惡かった。木馬館前で飲んでいた顔が、次々とまたここへ現われる。結局「顔」がほとんど飲んでしまうようだ。樽の前にしやがみ込んでビールを出している事務員 (?) は、いずれも老人で、いずれも、なんともいえない苦々しい表情をしていた」と感じた。

次期作戦へ敵躍起

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)461

次期作戦へ躍起

 七月二日の朝日新聞は「次期作戦へ敵躍起」を受けて「本土近海に迫らば 我、有利の邀激戦」とある。

 二面には、「敵米が喚く『無条件降伏』とは」と、様々記している。敗戦を視野に入れてきたことがわかる。他に「主食料一割減」と東京の食料難は進んでいる。

 読売新聞は「感狀・上聞の榮え」として「空母以下 百七十余隻撃沈破 山本飛行部隊・動配属部隊」が記され、「激化す九州航空戦」「沖縄敵基地 整備成るか」と続く。

 二面は「国民義勇隊 指導者に望む」。「形式や独善を排す 成否懸る人の和 魂の入つた感激を生め」とある。郷土戦線に関連して「壕生活者」に「抜打ち査察」「怠慢工員や事業主に警告」。「〝戦災東電兵〟焼跡から希望の出陣」、「ハリ切る子供部隊」などの記事がある。

 山岡荘八の従軍記・中には「一を以て千を制す 死ぬ訓練・若桜の至情」などが記されている。

 風太郎は、剣道五段の松野白麟先生から、「『往来でも通ってぶつかって見ろ、肩で切れそうな奴は一人もいねえ。みんなヒョロヒョロしてつんのめってしま いそうな奴ばかりじゃねえか』 と言い、また、勝つ勝ついって、何を根拠に勝つちゅんじやという。されど憂国の気、眉宇に満」と、感じた。

山岡荘八の従軍記

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)460

山岡荘八の従軍記

 七月一日の読売新聞は沖縄戦況として、「北部山岳で遊撃戦 慶良間に敵船団二百隻」「敵基地と艦船群を 特攻・荒鷲猛攻」「沖永良部島を敵艦偵察」とある。

 他にバリツクパパンで「わが部隊と激闘中」「艦艇五十隻で砲撃」。戦局大観として「荒鷲硫黄島攻撃 四ヶ所以上を炎上さす」などの記事が続く。

 二面に山岡荘八の「神雷従軍記(上)日本戦術の夜明け 敵戦慄〝眼を持つ兵器〟」がある。他に「決戦生活に配給の不安一掃」とあるが、国民はこの言葉をそのまま信じて読んでいたであろうか。

 朝日新聞は、ボルネオ島の「バリツクパパン戦果拡大 更に二駆艦撃沈」と。続いて「艦船、基地を連襲 沖縄、炎上火災五箇所」の戦果を掲載。

 二面には、「配給機構の決戦体制」として、公営の総合配給、一町会に一箇所設置などが記されている。

 高見は講読新聞が一紙になったと。

映画や演劇どしどし再建 街や職場へうるおいの進出

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)459

映画や演劇どしどし再建 街や職場へうるおいの進出

 六月三十日の朝日新聞は「長参謀長と共に牛島中将自刃 沖縄海辺に従容の最期」と、末期的な状況をこのような見出しで表現している。

 二面には、「誇りを生かし国家が親代わり」とある。戦災孤児育成の対策進む、ともある。しかし、この日の二カ月後の八月末には、戦災孤児がどのような状況であったか。何とも、腹立たしいくらい無責任な記事である。

 また、「映画や演劇どしどし再建 街や職場へうるおいの進出」とある。「生活のきびしさに堪え、戦列に踏止って明るく戦い抜くためにはすさび勝ちの心をうるおす慰安機関の再建こそ第一であると」娯楽施設の復興をはかることとなった。映画や演劇などの娯楽を再建させて、街や職場に「うるおい」を取りもどそうとの掛け声である。これまでの禁止一辺倒ではなく、臨機応変に映画や演劇を行うことができそうになった。 

 読売新聞も「従容・牛島最高指揮官の最期」の見出しで、追悼記事が掲載されている。他に「本土決戦を前に」と、海軍少佐談「許すな破壊暴撃 近接の敵を地獄へ」。閣議決定として「本土戦場化に備へ 緊急措置発動」などが記されている。

 二面は一面受けるように、「本土決戦の勝敗賭す航空撃滅戦」の見出しに「敵上陸の妄念叩潰す 死守せよ制空権」「翼だ凝集だ一億総力」とある。