最後の攻勢を實施せり

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)454

最後の攻勢を實施せり

 六月二十五日の朝日新聞は、沖縄戦が事実上集結したこと、そのことを「沖縄に輝く牛島部隊の偉功」「皇軍の威武を宣揚」と讃えて、伝えている。

読売新聞は「空母、戦艦等に突入」「特攻・雷撃隊 敵艦艇群捕捉」、戦局大観として「島尻東西の拠点で 皇軍果敢な反撃」「沖縄南端に敵空母蟠踞」とある。

 国内では、「打破れ対日航空包囲環」として「奔命の基地整備も 地勢は敵に不利 空襲野望に限界有り」との記事。

 二面に「学術探求魂焼けず」「再建する罹災各大学」と。「図書館は殆ど無事 動員、生きた講義」「残る教室、疎開先で勝利の科学」とある。その一方で「一億〝魂のあり方〟明示。「没我以て皇土を護る 武器なくも肉弾の概とある。

 食糧の朗報として、写真入りで「〝戦場〟鹿島灘・意気で手操る大漁」の記事。また写真入りで「帝都の真中 焦土に田植」が神田の焼跡で行われた記事。

 「ラジオの大本営発表沖縄の玉碎を知る。玉碎もはやこの言葉は使わないのである。(註 玉碎のかわりに『最後の攻勢を實施せり』」と高見は記している。

最後の激戦か

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)453

最後の激戦か

 二十四日の読売新聞沖縄戦況は、「南部の敵滲透強引 数箇の焦点で激闘 皇軍、東西の両據点で猛反撃」、「巡艦等十二を撃沈破 荒鷲・鉄鯨 敵飛行場も爆碎」と。

 「本土決戦必勝の鍵 国民の双肩に 万苦克服・驕敵撃滅せん」との、阿南陸相放送の記事。

 二面には、国民の関心と協力を得ようとする記事、「焦土に食糧増産の第一陣」の下谷区国民義勇隊・颯爽の出陣」。「学校工場に咲いた〝殉国の華〟四輪」のタイトルで「機械を純血に染め 雄々し職場死守」「四女学生へ軍需監理局長官の表彰」との記事。

 その一方で、「空襲下の結婚式場をのぞく」と、日本橋三越の結婚式場では豪華な式があげられていた。「花嫁姿を脱げば〝防空服〟 〝いま時〟と驚くほどの繁盛ぶり」とある。

 朝日新聞は「新垣、摩文仁中心に 拠点を確保激闘」と、沖縄戦の戦況伝えているが、沖縄の地名は難しいので、戦況がどのように展開しているか、東京の人では限られるだろう。そして、戦果や勝敗も、わかりやすくは報告されていない。

 二面には、「勝ち抜かう食料戦争」について書かれているが、その詳細には、棄てよ利己主義 反省しよう「無為徒食」など、精神論、掛け声がある。

帝都義勇隊に初出動指令

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)452

帝都義勇隊に初出動指令

 六月二十三日の読売新聞・沖縄戦況は、「逐次浸透の敵撃撃 背水決死の奮戦中」「島尻南端 敵海空陸から猛攻」、戦艦等五隻を痛撃 先島列島二機動部隊蠢動」とある。なお、これまでに「米軍の損害百一万 敵膨大な出血に悲鳴」との記事。わが国の損害には触れず、戦果を示すだけの方針は変わらない。

 国内では、「B29中小都市暴爆激化 近畿、中国へ分散 三百六十機で来襲」とある。他に、「衣食一切綜合配給所」「戦災地残留者の生活を確保」とある。

 二面に「帝都義勇隊」に「発の普通動員指令」「道義昂揚と戦災地整理農地化 一人一坪以上耕せ」とある。その義勇隊は「男子より多い女子との「帝都職域結成の中間報告」。

 他に、「勝ち抜かう敵の中小都市暴爆」は「備えあれば不安なし 挫けるな敢闘魂 手の内見えた鬼畜ルメーの魂膽」との記事。

 朝日新聞は「二郡の拠点で敢闘」と、沖縄戦の戦況伝えるだけで、前日以前の戦いの戦果も、勝敗も触れていない。

 二面には、「帝都義勇隊に 初出動指令 必ず耕せ・一坪以上」。昴めよ道義、防衛に挺身、と続く。これが「本土決戦」にどのくらい役に立つのであろうか。また、「徒手で米兵を必殺」なども写真入りで掲載されている。

沖縄同胞の血闘を偲ぶ

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)451

沖縄同胞の血闘を偲ぶ

 六月二十二日の読売新聞は、外電「本土上陸作戦に敵慎重」、「沖縄の出血に恐怖 先づ爆撃、封鎖強化」などとある。沖縄戦況は「島尻全線に激戦中」「仲座、八重瀬岳南側 わが軍陣地固守」と、「敵艦船群を夜襲 荒鷲、反覆損害を与ふ」などとある。なお社説に、「自己表現の勇気を与えよ」は、空々しさを感じざるを得ない。

 二面に「沖縄同胞の血闘を偲ぶ」、「腰にただ愛刀一口 燃ゆ防人の気魄」「瞼に熱し征立つ日の島田知事」とある。「戦ふ〝日本婦道〟」「脈うつ愛国の熱血 時到らば発揮せん機知、勇猛心」との記事。悲壮感漂うような記事が続く。

 朝日新聞は「沖縄南部に敵艦近接 旺盛の滲透企図」と、またも沖縄戦の戦況伝えるだけ。

 二面の「青鉛筆」には、B29が落としたとされる絵の具を毒チョコレートではないかとの話が出ている。結論として、神経質になりすぎているとの落ちがある。

 高見は、本土決戦の準備に駆り出されている。「立退の準備をしておくようにと、裏の陣地の隊長からいい渡されたと、暗い面持でいう。機関砲が据えつけられると、立退命令が出るというのである。しかしその機関砲は、 どこかのを外してこっちに廻すのだそうで、とっくに来ているはずなのだがなかなか来ない。兵器が足りなくて……と隊長も苦笑していたという」と。

敵更に総攻撃開始

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)450

敵更に総攻撃開始

 六月二十一日の読売新聞は、「敵更に総攻撃開始」と「南部高地滲透焦る 一部既に戦線錯綜す」との戦況を示す。「新たに十基地構築中 敵海蜂部隊を極度に活用」とあり、「戦機熟す航空決戦」「沖縄各基地に敵五百機を結集」に対して「全滅を期す 我基地の志気旺盛」と、「皇軍の闘魂敵陣を震撼」との記事。

 二面に「逞し整備工作隊の大戦果」「灰陣に挑む特攻魂 続々甦る工作機械」などの士気向上を伝える記事。また「沖縄少女が深夜作業の合い言葉」との記事がある。激戦下に駆り出された少女の写真入りで「瞼に浮かぶ戦ふ父母」とある。

 その一方、本土では「ガス料金四割引上げ」と、生活の困窮を増す記事がある。

 朝日新聞は「仲座から西海岸一帯 一部は粉戦状態」と、沖縄戦の戦況伝えるだけ。また、「B29の中小都市攻撃激化」とあり、これはもう本土決戦が始まっていると考えられないのであろうか。何を以て「本土決戦」とするのか、理解に苦しむ。

 二面には「代替配給 お米と抱合せて 玉蜀黍や高粱も登場」と、食糧事情の悪化を示している。

 

敵最高指揮官戦死

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)449

敵最高指揮官戦死

 六月二十日の読売新聞は、沖縄方面「敵最高指揮官戦死」「中将バックナー我砲撃に殪る」「アツツ積怨の敵将」とある。戦果として、「南高地を奪回反撃」「八重瀬獄、大里で激戦」と、「小禄の敵一戦に滲透」。特派員発で「梅雨と泥海ついて 言語に絶する苦闘 敵航空勢力著しく増強」とある。

 二面に「戦ふ〝住〟に不安なし」と、「罹災堅牢建物も活用 戦時住区を選定」などに触れる。「食糧 端境期の作戦」として、「自家生産で捕捉」「偏る代替配給も我慢」と。「味噌、醤油の配給量が変わる」「六割で済む濃厚醤油も登場」のように、厳しくなっているようだ。

 朝日新聞は「大里南方 高地で劇戦 敵の滲透邀へ猛反撃」と、沖縄戦の戦況だけで、我が軍の被害どころか米軍の被害にも触れていない。

 二面には、「焼け屑鉄から手榴弾」を作ること、焦土戦力化に電気製鉄炉の登場などを記事としている。それは、本土への空襲が激しくなって、生じたことで、決して喜べることではない。

 「前夜の敵機は、静岡、豊橋を襲った。福岡へも行った。中小都市の爆撃がはじまったのである」と、高見は心配している。

対独処理の二方式

江戸・東京市民の楽しみ(昭和時代)448

対独処理の二方式

 十九日の読売新聞は社説で「対独処理の二方式」を解説。この記事をやがて来る日本の事と受け止める人は、どのくらいいたであろう。政府・軍部は、全く他人事として眼中になかったのであろうか。

 沖縄戦況は「敵の八個師大出血」「損害予想外とニミツツ告白」「南部焦慮の攻撃急」と。「沖縄本島 荒鷲未明の急襲」「敵飛行場大火災」がある。外地では、「ボルネオ 南地区に艦砲射撃」「敵侵出阻む」。「河南西部に新作戦 廬氏街道制圧・敵を痛撃」などが記されている。

 二面に「いざ来い地獄へ逆落し」とのタイトルで「対空挺戦闘」のポンチ絵3枚が掲載されている。「敵空挺隊降下せば」「たゞ殲滅のみ」とのコメントがある。

 他に、「これが要残留者の生活新設計」「凡ては職場中心に 作れ戦闘生活圏 不屈の闘魂に隘路なし」と。「勝利の道を率先捲き起せ」「任務遂行に全知全能を蕪し『誠』を顕現」との特攻隊司令の訓示がある。

 朝日新聞の記事は、沖縄での「小禄今や犬牙錯綜 八重瀬獄で劇戦」との戦況だけである。二面には、「捨てよ都会生活の垢、集団帰農にこの覚悟」と、前日の記事と同様、今後の方針や施策について場当たり的な記事。