『花壇地錦抄』4 草花春之部・草花夏之部

『花壇地錦抄』4草花春之部・草花夏之部
草花春之部
 「草花春之部」には53品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。これらを『牧野新日本植物図鑑』などから推測すると以下のようになる。
 「福寿草」は、フクジュソウキンポウゲ科)。
 「白福寿草」は、フクジュソウキンポウゲ科)の白花。
 「菫草」は、スミレ(スミレ科)総称名?。
 「児花」は、オキナグサキンポウゲ科)。
 「一りん草」は、イチリンソウキンポウゲ科)。
 「おかこうほね」は、リュウキンカキンポウゲ科)。
 「華鬘」は、ケマンソウ(ケシ科)。
 「山吹草」は、ヤマブキソウキンポウゲ科)。
 「櫻草」は、サクラソウサクラソウ科)。
 「八重コウホネ」は、コウホネキンポウゲ科)の八重。
 「他偸草」は、エビネ(ラン科)。
 「仙臺萩」は、センダイハギ(マメ科)。
 「まゆはき草」は、ヒトリシズカ(センリョウ科)。
 「あらせいたう」は、アラセイトウアブラナ科)。
 「白つづミ花」は、シロバナタンポポ(キク科)。
 「澤車」は、サワオグルマ(キク科)。
 「金銭花」は、キンセンカ(キク科)。
 「つづみ花」は、タンポポ(キク科)。
 「鹿子草」は、カノコソウ(オミナエシ科)。
 「丁子草」は、チョウジソウ(キョウチクトウ科)。
 「黄蓮」は、オウレン(キンポウゲ科)。
 「くもきり」は、クモキリソウサ(ラン科)。
 「るり草」は、ルリソウ(ムラサキ科)。 
 「春菊」は、ハルギク(キク科)?総称名?。
 「紅黄草」は、コウオウソウ(キク科)。
 「踊子草」は、オドリコソウ(シソ科)。
 「おだまき」は、オダマキキンポウゲ科)。
 「金風花」は、キンポウゲ(キンポウゲ科)。
 「もじづり」は、モジヅリ(ラン科)。
 「路宿草」は、サギゴケゴマノハグサ科)。
 「黄花鬘」は、キケマン(ケシ科)。
 「布袋草」は、クマガイソウ(ラン科)。
 「熊谷草」は、クマガイソウ(ラン科)とすると重複することになる。アツモリソウより花の色が薄いということで『牧野新日本植物図鑑』を捜すと、コアツモリソウがある。花はアツモリソウより小さく、全体的にも小さい。「熊谷草」がこれに該当するとは断定しにくく、不明とする。
 「眉作り」は、アザミ(キク科)・総称名。
 「初ゆり」は、バイモ(ユリ科)。
 「敦盛草」は、アツモリソウ(ラン科)。
 「弁慶草」は、ベンケイソウ(ベンケイソウ科)。
 「春すかしゆり」は、スカシユリユリ科)変種。
 「花芥子」は、ケシ(ケシ科)・総称名?。
 「美人草」は、ヒナゲシ(ケシ科)。
 「春蘭」は、シュンラン(ラン科)。
 「姫鳶尾」は、ヒメシャガ(アヤメ科)。
 「四季杜若」は、カキツバタの変種?(アヤメ科)。
 「九輪草」は、クリンソウサクラソウ科)。
 「ばれん」は、ネジアヤメ(アヤメ科)。
 「鳶尾」は、シャガ(アヤメ科)。
 「加茂葵」は、フタバアオイウマノスズクサ科)。
 「筋鳶尾」は、シャガ(アヤメ科)。
 「天南星」は、テンナンショウ(サトイモ科)・総称名。
 「草のわう」は、クサノオウキンポウゲ科)。
 「黄精」は、ナルコユリユリ科)。
 「まりこゆり」はナルコユリユリ科)との見解がある。しかし、ナルコユリの花色は白(緑白)で、「まりこゆり」の説明では「花うす紫中りん」とある。花の大きさも「中りん」とは言い難く、ナルコユリとは異なる植物と判断した。
 「節庭花」はゼンテイカユリ科)ではと考えたが、ゼンテイカは他(日光黄菅で)に出ており異なる植物と判断した。なお、説明で「四季ニ花咲」ということから、ゼンテイカの園芸種(変種)かもしれない。
 
△草花夏之部
○百合草のるひ

 「百合草のるひ」は37品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。「夏すかし・天目ゆり・筋ゆり・たもとゆり・黒紅・豊嶋・白黄・大嶋ゆり・武嶋・車ゆり・ためとも・ささゆり・鎌倉ゆり・琉球・はかた・緋ゆり・姫ゆり・唐ゆり・南蛮・鬼ゆり・姥ゆり・鹿子ゆり・大ゆり・白ゆり・白八重・くもりゆり・京ゆり・てうせんかさゆり・金澤・ゑぞゆり・ゑちご・こくゆり・さゆり・黄平戸・紅平戸・かき平戸・うす平戸」の中で、『牧野新日本植物図鑑』などで確認できたのは以下の通りである。
 「武嶋」は、タケシマユリ(ユリ科
 「ためとも」は、テッポウユリユリ科)。
 「はかた」は、ハカタユリユリ科)。
 「姫ゆり」は、ヒメユリ(ユリ科)。
 「車ゆり」は、クルマユリユリ科)。
 「ささゆり」は、ササユリ(ユリ科)。
 「姥ゆり」は、ウバユリ(ユリ科)。
 「鬼ゆり」は、オニユリユリ科)。
 「鹿子ゆり」は、カノコユリユリ科)。
 「てうせんかさゆり」は、チョウセンカサユリ(ユリ科)。
 「こくゆり」は、クロユリユリ科)。
 「さゆり」は、ヒメサユり(ユリ科)。
 なお、「ゑぞゆり」は、エゾスカシユリユリ科)の可能性がある。または説明から、スカシユリユリ科)の変種であろう。                                     「黄平戸」を初めとして、園芸種(変種)と思われる品名を以下に示す。               「黄平戸」は、コオニユリユリ科)・変種。
 「かき平戸」は、コオニユリユリ科)・変種。
 「紅平戸」は、コオニユリユリ科)・変種。
 「うす平戸」は、コオニユリユリ科)・変種。
 「夏すかし」は、スカシユリユリ科)・変種。
 「天目ゆり」は、スカシユリユリ科)・変種。?
 「豊嶋」は、スカシユリユリ科)・変種?。
 「筋ゆり」は、ヤマユリユリ科)・変種。?
 「黒紅」は、ヤマユリユリ科)・変種。?
 「白黄」は、ヤマユリユリ科)・変種。?
 「たもとゆり」は、テッポウユリユリ科)・変種?。
 「琉球」は、テッポウユリユリ科)・変種?。
 「緋ゆり」は、ヒメユリ(ユリ科)・変種?。
 その他、「金澤・ゑちご・大嶋ゆり・鎌倉ゆり・唐ゆり・大ゆり・白八重・くもりゆり・南蛮・白ゆり・京ゆり」については、説明はあるものの推測できないため不明とする。

○桔梗のるひ
 「桔梗のるひ」は8品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。これらを『牧野新日本植物図鑑』で確認できたのは、「澤きけう」だけである。
 「澤きけう」は、サワギキョウ(キキョウ科)。
 他の「扇子桔梗・二重仙臺・白二重・かき色・仙臺・牡丹・るり八重」の7品は、キキョウ(キキョウ科)の変種と思われる。

○がんひのるひ
 「がんひのるひ」は8品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じでる。これらを『牧野新日本植物図鑑』で確認できたのは、以下の「松本せんおうけ・小倉仙翁花・黒節」の3品である。
ある。これらを『牧野新日本植物図鑑』などから推測すると以下のようになる。
 「松本せんおうけ」は、マツモトセンノウ(ナデシコ科)。
 「小倉仙翁花」は、オグラセンノウ(ナデシコ科)。
 「黒節」は、フシグロセンノウ(ナデシコ科)。
 「白がんひ・赤がんひ」は、ガンピ(ナデシコ科)の変種と思われる。
 「櫻節・紫節・抜節」は、フシグロセンノウ(ナデシコ科)の変種と思われる。
 

○瞿麥のるひ
 「瞿麥のるひ」は11品あり、すべてに説明がある。「江戸版」「京都版」とも同数でほぼ同じである。これらを『牧野新日本植物図鑑』で確認できたのは、以下の「かわらなでしこ」「ふちなでしこ」である。
 「かわらなでしこ」は、カワラナデシコナデシコ科)。
 「ふちなでしこ」は、フジナデシコナデシコ科)。
 「白八重なてしこ・紅八重・紫八重・すそ壁・しやぐま・するが撫子・白かわら・ちやうせん・鷺撫子」は、カワラナデシコの変種と思われる。確かに、「白かわら」は、カワラナデシコナデシコ科)の変種と思われる。しかし、ナデシコ属をナデシコセキチクに分けるのは難しく、品の説明文だけからでは、カワラナデシコの変種と断定することは無理がある。