大正時代の三大レジャー

江戸・東京庶民の楽しみ 184

大正時代の三大レジャー
・大正期を代表するレジャー
 大正時代に最も楽しまれた娯楽・レジャーは、映画・博覧会・花見である。これらは、大正期に最も多くの東京市民が楽しんだ三大レジャーといえる。その規模は、市民の半数以上(延べ100~1000万人)が参加又は動員されている。また、レジャーという意識はあまりないものの、心身のレクリエーションに非常に効果があったと思われる参詣・参拝も大勢の人々が行なっていた。
 博覧会、様々な珍しい物品を展示するイベントは、明治時代から催されていた。人々に科学技術や芸術文化などを示し、一般社会の知見を高め、産業の振興に資することを目的とした。官主導であったことから、教育的な色彩が強く、娯楽的な見世物とは一線を画していた。しかし、訪れた人々が感じたのは、江戸時代の開帳や物産会の延長であり、好奇心を誘う見世物的な娯楽的性格であった。
 大正時代のビッグイベントを追うと、元年の大喪、天長節(二年)、大正博覧会(三年)、戦捷博覧会と即位の奉祝(四年)、海の博覧会と婦人子供博覧会(五年)、東京遷都奉祝博覧会(六年)、電気博覧会(七年)、遷都五十年の祝祭と平和記念家庭博覧会(八年)、明治神宮鎮座祭(九年)、大正衛生博覧会(十年)、世界平和記念博覧会(十一年)、東宮御成婚の奉祝(十三年)、畜産工芸博覧会(十四年)などがある。博覧会はこの他にも頻繁に開催され、その意味では大正時代は「博覧会の時代」とも言えそうだ。これらのイベントは、官製色が強く多少窮屈なレジャーではあったが、大勢の市民が参加することによって、人々に遊ぶ気運を盛りあげるという効果があった。
 それに対し花見は、江戸時代から続く自然発生的なレジャーであり、楽しみ方は民衆の流儀で展開されていた。花見時の人出は、「東京が留守になるほど」と書かれたほどで、元日の初詣客を優に超えるくらいの人出があった。このように花見が異常なまでに盛り上がったのは、仮装が許されるなどの江戸時代からの慣習が続き、市民が比較的自由に振る舞えたからであろう。もっとも、上野や飛鳥山の花見で無礼講が許されたのは、あまりにも多くの人が出て、さすがの警察もコントロールできなかったというのが本音かもしれない。
 そして、明治から大正になったことで、大きな変化が起きたレジャーがある。もちろん、元号の変化したというだけで世の中が急に変わるものではないが、確かに1912年(大正元年)を境に大きく変化したレジャーがある。それは、東京の映画(活動写真)館の入場者数である。前年(明治)までは延べ三百万人に満たなかったのが、一挙に三倍、一千万人近くにまで増加したと推測される。
 明治時代の映画は、「写し絵」や「幻灯」と同じく見世物の一つにすぎない。写真が連続的に映されることで、かろうじて登場する人や物が動いているように見えるという代物であった。目黒の行人坂に日本初の撮影所ができた明治四十一年(1908)頃から、映画は大衆娯楽として人気を集め始めた。映画を見る人が劇場や寄席の観客数を超えたのは大正時代に入ってからだと推測される。
 具体的なデータとして、映画と見世物の観客数がある。映画観客数が「活動写真館入場人員」として統計(『東京市統計年表』)に載ったのは、浅草帝国館ではじめて映画プログラムが発売され、チャップリンの喜劇映画が上映され人気が沸騰した大正五年(1916)からである。大正五年の活動写真館入場人員(映画観客数)は、1,266万人に増加した。ちなみに見世物、観物場入場人員は348万人、劇場観客数452万人、寄席入場人員267万人。
 映画観客数は、社会状況によって変化していると推測できる。大正六年(1917)警視庁が定めた「活動写真取締規則」によって、フィルムの検閲や男女席の分離が実施されるなど、映画に対する規制が強くなった。また、この頃から物価が高騰、翌年には全国的な米騒動が起こり映画観客数は減少するが、その後はまた、関東大震災の年を除くと一貫して増加していった。大正十五年(昭和元年)には、1,469万人となる。東京市の人口が206万人だから、単純に計算すると一人当たりの入場回数は年に7回となる。
 大正時代は、いかに多くの市民が映画を見るようになったかがわかる。したがって、大正は「映画とともに始まった時代」といえそうだ。また、観客数の多さから、映画ほど大正時代を特色づけるレジャーはない。そして、映画は単なる娯楽としてだけではなく、人々に世界中の様々な情報や考え方、生きかた、楽しみかたなど、実に様々なことをスクリーンを通して伝えた。中でも、社会風刺の強いチャップリンの映画などは、かなり刺激的であったと推測される。それも、学校のような教訓的授業や警察の取締のような強制でもなく、映画を見ることを通して感化されていった。後世の知識人は、演劇や書籍がデモクラシーを広めたと評価しているようだが、民衆のデモクラシーは、実は映画から影響を受けたと感じ取れる。映画は民衆のレジャーであると同時に、彼らにデモクラシーを紹介する役割を果たしていたことも見逃せないと思う。もちろん映画は、デモクラシーを「民主・自由・平等」というようなハッキリした概念で伝えたとは思わないが、生活するために必要な権利があることを感じ取ったのは確かであろう。ただ、残念なことに、その自由や平等を多少なりとも民衆が享受できたのは、映画館の中や花見の時くらいでしかなかった。日本の民衆のデモクラシーは、西欧のようなハッキリとしたものではなく、それとはかなりずれていて、それがまた大正デモクラシーの特徴でもあったと言えよう。

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映画と見世物の観客数

・映画演劇関連の記事
大正元年(1912年)
5月 金竜館「ジゴマ」日延べ
6月 新富座楽天会の「瓢箪池」連日大入り
   浅草国技館で南極実況活動写真、連日満員好
8月 十一日より浅草など映画・演劇興行の復活
   オペラ館「ジゴマ」連日大入り
   浅草福和館「ジゴマ」上映
9月 宮戸座、大入りに付き十日まで日延べ
    ジゴマの奇術を真似する人多く、死者まで出る
   オペラ館「ジゴマ」連日大入り
   新富座の勤皇劇大評判連日満員御礼
10月 有楽座で米国ハートマン一座の喜歌劇
   真砂座「灯」連日満員
   本郷座「真田幸村」の初日、満員
   福和館新派劇「高橋お伝」他上演
   帝国劇場、ロッシーの無言劇「犠牲」他上演
   ジゴマの最期、浅草六区など賑わう
   錦輝館「リニア」大好評
   有楽座「ヘッダ」日延べ、一等1円・三等40銭
   市村座「勇将の妻」評判
11月 歌舞伎座、切符制に改め、初日は大分景気付く
   富士館「忠臣蔵」好評
12月 帝劇、女優劇で相変わらず一杯の好景気
大正二年(1913年)
1月 演技座、三箇日は40銭均一で一杯
2月 オペラ館「絶壁の秘密」好評
   富士館「佐倉義民伝」上映、大好評
3月 富士館「三日月」連日大入
   帝劇「ファウスト」初日、新芝居にしては珍しい程の入り
4月 本郷座の曽我廼家、初日から大入
5月 有楽座でイプセンの「鴨」上演
6月 帝劇「トスカ」の初日、梅幸幸四郎で一杯の入り
   大勝館「銚子の五郎蔵」他大入御礼
   真砂座「弘法大治郎」大入日延べ
   帝劇「シーザー」初日から大入り
7月 富士館「新馬鹿大将ボビー」他大入り日延べ
8月 電気館「何が故」連日満員
9月 有楽座「内部」芸術座の初日満員
   電気館「宇良表」大好評
   帝劇「マクベス」空前の盛観
10月 常盤座の曽我廼家五九郎一座の喜劇が盛況
   キリン館、天然色活動写真、連日満員
   みくに座、小奈良、大入満員
11月 帝劇「千本桜」他森律子で初日大入り
   宮戸座「鎌倉山桜御所染」「神道水滸伝」好評大入り
   帝国館「白と黒」昼夜満員
12月 有楽座で初の発声活動写真、好評
大正三年(1914年) 
1月 本郷座・明治座等売切れ満員
    浅草公園みくに座、発声活動写真に楽燕の連夜大入り満員
   藪入り、浅草六区の映画館はいづれも大入り満員
2月 大勝館「クイン」上映大好評
     都座、露国女優ダンス又々日延
   浅草朝日館、洋画・空中の秘密等で連日満員
   第一福賓館「天馬」大入りにつき日延べ
   帝国館「軍神」満員盛況三日間日延べ
3月 市村座憲兵の娘」青年新派好評大入り
   キリン館「新四谷怪談」大好評
   新富座「渦巻」毎日売切れ
   トルストイの「復活」帝劇で初演
   電気館「アントニークレオパトラ」日延べ
5月 遊楽館の活動「冒険談猿が島」好評
   「クレオパトラ」葵館④第五福賓館⑩第三福賓館⑰明治座上映続く
6月 キリン館史劇「全勝」新派悲劇「女伯爵」盛況
7月 帝国館「リスク」大好評
   帝国館「天馬」満員に付早朝来館を
8月 浅草三友館の実録劇「女装探偵・電五郎」連日の満員
   日本館「カチューシャの唄」満員日延べ
9月 浅草電気館の活動「軍吏と曹長
   松井須磨子の復活劇、連日の大入り満員
   帝国館の大活劇「白墨」
    オペラ館、「女の一生」大好評
10月 大勝館「狸退治」大入り好評
   時雨降る日に満員、増井須磨子の本郷座
   有楽座の演芸大会大入り日延べ
11月 「カチューシャ」三友館・葵館・第三福賓館で連日満員
   日活の戦況映画、遊楽館・三友館・オペラ館等で一斉封切
   遊楽座、「天中軒雲月」上演
   浅草みくに座の活動「大決戦」
12月 帝国館「海の彼方」連日満員大好評
   遊楽館「越後騒動」好評
大正四年(1915年) 
2月 みくに座の連鎖劇、毎日大入満員
3月 浅草帝国館「吶喊」連日満員早い者勝ち
    上野みやこ座で「サタン劇」上演
4月 みくに座「恋ごろも」連鎖劇すこぶる好評
    三友館の連鎖劇実録「忠臣蔵」日延
   帝劇の芸術座劇「その前夜」「サロメ」他満員
   常盤座水野劇「役者の妻」連日大入
5月 金竜館の五九郎一座「サロメ」を出し評判
   大勝館上映の「柳生旅日記・天馬続編」初日来連日満員
    浅草帝国館上映「三碼」大入満員
6月 浅草電気館「大探偵ヂューブ」続編
   浅草オペラ館の「鳩の家」連日満員の盛況
   遊楽館新狂言「蜘蛛の名人」他好評
   富士館の教育写真「曾我兄弟」大入日延
   オペラ館「小ゆき」初日来大入満員
   三友館「盲芸者・快男子」好評上映
7月 演技座の近代劇協会の一番目に「金色夜叉」上演
   帝国館の「白鬼面」大入御礼
   三友館の盆興行「幽霊屋敷」上映
   本郷座の盆興行「荒木又右衛門」他
   金竜館の五九郎一座「男一匹」他好評
8月 帝国劇場「競伊勢物語」日延べ
   遊楽館「真田幸村」他を上映し盛況
   帝国劇場「競伊勢物語」日延べ
9月 みくに座の井上正夫一座、連日満員
   三友館実写「乃木大将一代記」上映
10月 電気館「続編マスターキー」上映
   オペラ館「娘一代記」大入り
   東京座の「鳩の家」日一日好況にて大入満員
11月 中央劇場、連鎖「潮」相変わらず満員
   みやこ館「ヂューブ大探偵」上映
   遊楽館「赤垣源蔵」他の連鎖、大好評
大正五年(1916年) 
1月 オペラ館新派大悲劇「洋妾(ラシャメン)の娘」他大好評
2月 本郷座「番町皿屋敷」初演
   大勝館「怪勇忍術太郎」好況
3月 富士館「大山道節」大入り満員
   本郷座「虎公」劇、大景気
    遊楽館実演連鎖「潮田又之亟」他連日満員
   オペラ館「うき世」劇、連日満員で日延べ
4月 大勝館「須磨の仇波」好評連日満員
    帝国劇場「先代萩」他売切れ満員
   有楽座の下山京子満員御礼
   常盤座の芸術座劇二日目須磨子好評満員
   神田劇場「鬼の悔悟」他上演大入
5月 オペラ館天覧「小騎手」他上映大盛況
6月 有楽館の連鎖又新派、好評
   新富座の山長連鎖劇大当たり
   有楽座無名会の「マクベス」上演
   帝国劇場「夜討曾我」他連日大盛況
   有楽館の新派悲劇「うき雲」好
7月 上野みやこ座「ガレルハマ」連日満員
8月 帝国劇場「いがみの源太」他連日満員御礼
9月 大勝館「忍術三銃士」上映大入御礼
   帝国劇場「江島生島」他初日満員
   大勝館「河童又助」他大入満員
   遊楽館「化銀杏」他大評判
10月 第一劇場、演技座、帝劇等初日満員
   オペラ館、新派悲劇「恋の仇波」好評
11月 キネマ倶楽部、大活劇「獅子吼・珍行列車」大評判
   遊楽館「河童の猿丸」好評
大正六年(1917年)
2月 大勝館の三大提供、連日満員
   市村座「女しばらく」他大入り続き
   観音劇場「柳生二蓋笠」他非常な人気
   新富座「神霊矢口ノ渡」他売り切れ
3月 オペラ館「つや物語」連日満員
   富士館、弦斎の「桜御所」連日満員
   電気館「赤輪」上映好評嘖々
4月 電気館「シヴィリゼーション」満員
5月 明治座で天外追善喜劇初日満員
    新富座有職鎌倉山」他初日から満員
6月 富士館「由良長者」上映、人気独占
   第二遊楽館、松之助の映画等大好評
   オペラ館、徳田秋声「誘惑」劇、大入日延べ
7月 チャップリンの映画、電気館・富士館で連日好評満員
8月 昨日から活動取締実施(男女区別等)・・何でもないと館員言う
   浅草キネマ護る影大会、大好評
   帝劇「魚屋宗五郎」他連日盛況
   帝劇、映画「潜航艇の秘密」満員だが、男女別席励行で混乱
9月 渋谷劇場初開場
   有楽座の少女歌劇、連日大入り
   富士館「仮名手本忠臣蔵」大好評
11月 キネマ「ジャン、ダアク」連日満員
12月 演技座、松旭斎天華の奇術、常盤座に続き大盛況
大正七年(1918年) 
1月 キネマ「マチステの義勇兵」大好評
    富士館「日本一雲月」満員御礼
    遊楽館の三大写真「名古屋山三」他連日満員
2月 遊楽館、松之助の「通力太郎」他盛況
   富士館「乗合馬車」大入り続く
   オペラ館「毒煙全編」他好評
   吾妻座、中村福圓七役好評湧が如し
3月 有楽座「十郎」満員御礼
   歌舞伎座「不如帰」連日満員
   オペラ館「二人娘」大好評日延べ
4月 新富座の喜劇楽天会一座、満員御礼
   オペラ館「金色夜叉」連日連夜満員の大景気
5月 帝国劇場「新鏡山」他満員
    オペラ館「続金色夜叉」盛況
    歌舞伎座東京市江戸城明渡」初日満員
   新富座「黒髪物語」満員御礼
   遊楽館「猿飛佐助」など好評
6月 吾妻座「吉原の大火事の塲」大好評
   オペラ館の特別写真「父の涙」すこぶる好評
   有楽座の近代劇、大入り満員
   新富座「都歌舞伎」他引続き満員
   公園劇場「四谷怪談」他連日満員
   電気館「世界の平和」他連日満員
   新富座「都歌舞伎」他連日満員
7月 歌舞伎座児雷也豪傑物語」他初日売切御礼
   新富座、楽燕「大石の山鹿護送」他満員
   歌舞伎座児雷也豪傑物語」連日満員
   本郷座大連鎖劇「仇波」大好評連日満員
8月 歌舞伎座「深川波の鼓」他連日満員
   明治座「黄金魔」他連日満員
9月 帝国劇場女優劇「露国舞踏」初日満員
   三友館「乃木大将」初日以来連日満員
   観音劇場新劇「残されし人」他大人気
   富士館、早川雪州・青木ツル子共演「火の海」他連日大入り御礼
10月 キネマ倶楽部「護国の少女」連日満員
12月 常盤座「不如帰」素晴らしい景気
   新富座天一坊」他売切満員
大正八年(1919年) 
1月 三友館の東屋楽燕、空前の盛況
2月 新富座曽我廼家五郎一座「御前角力」連日満員
   明治座「路傍の花」他昨日満員御礼
   有楽座のベーリンデー「カルメン劇」
3月 有楽座「肉屋とカルメン」初日満員
   明治座「羅馬の使者」他満員
4月 千代田館「八犬伝」大好評
   御国座「博多仁輪賀」盛況
   新富座乳姉妹」満員盛況
5月 浅草帝国館「イントレランス」連日満員日延べ
6月  遊楽館「稲生武太夫」大好評の盛況
   歌舞伎座「一日嫩軍記」満員御礼
7月 帝国劇場の女優劇、初日満員
8月 帝国館「曲馬団の囮」大受
9月 帝国劇場、特等12円の大歌劇
   新富座曽我廼家五郎「うっかりもの」三日間大満員御礼
   明治座明智光秀」他四日間満員御礼
   帝国劇場、自由劇場の「信仰」他6・7分の入り
10月 三友館「牡丹のお蝶」初日満員
   葵館「復活」他連日満員御礼
11月 明治座「傀儡船」二日目満員
   富士館「柳生十兵衛」他連日満員
   歌舞伎座「鎌倉図鑑」他満員続き
   彌生座「忠臣蔵」初日以来満員
大正九年(1920年) 
1月 三友館「梅咲く宿」大入り満員
2月 明治座「生命の冠」他満員御礼
   新富座曽我廼家五郎初日以来満員
    上野みやこ座「若き血潮」他大好評
3月 明治座「国光」他好評満員
   御国座「伽羅千代萩」他連日満員御礼
   本郷座「白鳥の歌」他初日満員御礼
   新富座で当彌生興行好評連日大入り
   公園劇場「野崎村」他連日大満員日延べ上演
   演技座「引貫筒真田入場」他満員御礼
4月 明治座「遠山桜天保日記」他満員御礼
   本郷座若手歌舞伎「新古劇八番内佐倉宗吾」他連日満員
5月 常盤座「生命の冠」他連日大満員五日まで日延べ
   遊楽館「神稲水滸伝」他連日大入り
6月 明治座「狂い咲き」他連日満員音楽
7月 歌舞伎座「井伊大老」前例なき大入満員御礼
   麻布南座、初開場の初日は満員御礼
8月 本郷座の新星歌劇団三の替わり好評連日満員
   御国座、福圓の水中飛込みと冒険劇満員続き
9月 帝国劇場「新カルメン」満員御礼
   キネマ倶楽部「世界の心」連日満員御礼
10月 南座「源平布引瀧」他初日二日目満員
   辰巳劇場、訥子一座大人気大入り満員
   帝国館「戦争と平和」他満員御礼
   オペラ館「恋ごろも劇」好評に付上映一週間日延べ
11月 三友館「決死の勇」他連日満員御礼
   市村座「南部坂雪の別れ」他初日満員御礼
12月 オペラ館「妹の死」不拘異例の大入り
   神田劇場、二大名画と三大喜劇連日満員御礼
   新富座「鉱山の秘密」日延べ大入御礼
大正十年(1921年) 
1月 常盤座「天眼通後編川徳」他二日まで日延べ
2月 本郷座「堀川」他初日から満員続きの盛況
   金春館「猛虎の如き女」他満員御礼
   明治座「絵姿」他昨日もまた満員
   葵館「恐怖週間」他連日満員
3月 観音劇場「男心女心」他相変わらず昼夜一杯の入り
   明治座俊寛」他連日満員
5月 歌舞伎座「菅原伝授手習鑑」他大入
   新富座「鎌倉心中」他満員御礼
   遊楽館、仇討物や豪傑物など松之助延一郎一座の傑作揃いで毎日満員
6月 新富座「醍醐の春」連日満員御礼
   明治座「かれーの市民」新国劇澤田一座大好評連日満員
   駒形劇場「不魔殿」満員御礼
10月 常盤座「仇花実花」他連日大々満員御礼
大正十一年(1922年) 
1月 金竜館・常盤座・東京倶楽部の開館式、喜劇や歌劇で大賑わい
2月 本郷座「海の極みまで」初日満員御礼
3月 三友館「松風村雨」大入り日延べ
   有楽座「研漠新舞踏研発表会」満員御礼
   金竜館「カルメン」他連日満員
5月 本郷座「加茂川堤殺人」連日満員御礼
6月 明治座「悪魔の鞭」初日満員
7月 千代田館「腕白少年」他満員御礼
8月 オペラ館「女訓導」連日満員で日延べ
9月 千代田館「シーフ」他連日満員御礼
   神田劇場旭大歌劇団の「バンドゥラ」他満員御礼
   明治座「謎帯一寸徳兵節」連日満員
12月 本郷座「大親鸞」一週間満員の盛況
   キネマ倶楽部「阿修羅の如く」他空前の大好評連日満員
大正十二年(1923年) 
1月 常盤館「夜討曾我」満員御礼
2月 公園劇場「大菩薩峠澤田正二郎新国劇満員御礼
   芝居改善の第一日、観客は幕間の早いのに大喜び
3月 富士館「豊公一代記」満員御礼
   公園劇場「次郎吉懺悔」連日満員
   金竜館「オセロ」満員御礼
4月 松竹館「噫無情」大入り日延べ
   水天館「欧州大戦争」満員御礼
5月 公園劇場「出家とその弟子」満員御礼
   キネマ倶楽部「オーバー・ゼ・ヒル」連日満員一週間日延べ
   金竜館「天国と地獄」大喜歌劇、満員御礼
   日比谷公園で夜間、東京朝日新聞社主催の極東大会写真盛況
   武蔵館「ファラオの恋」満員御礼
6月 有楽座の曽我廼家十郎の二の替御披露満員御礼
9月 関東大震災が起こる
10月 日比谷音楽堂で大盛況の野外劇「勧進帳」演劇に渇した2万人の見物
   上野公園で天勝一座の野外慰安舞踏大盛況
   本日より日比谷音楽堂で菊五郎一派の野外舞踏
11月 まっさきに明く仮小屋の宮戸座
12月 浅草の野外劇 お堂を取巻く幾万人
   予想外の人気に活気立つキネマ界
大正十三年(1924年)
1月 天幕劇場、新国劇で満員御礼
   興行界記録破りの大景気
   オペラ館「ベッスリア女王」他満員御礼
2月 オペラ館「金色夜叉」満員御礼
3月 電気館「嬰児殺し」他大好評満員に付日延べ
   大東京「清水次郎長」他満員御礼
   演技座、澤正の「松永弾正」他連日満員御礼
4月 演技座澤正の「松永弾正」連日満員御礼
5月 帝国館「大乱舞劇舞姫悲し」他満員御礼
   新富座「正チャンの冒険」他満員御礼
   遊楽館「乃木将軍」大好評連日満員御礼
6月 米国より独・伊の映画がおもしろい
   築地小劇場白鳥の歌」などオープン公演
   米国映画ボイコットの足並みくずれる
8月 常盤座、沢村源之助等の「女団七」他連日満員御礼
   浅草松竹座新声劇「血染の瀑布」好評満員
9月 演技座「五九郎劇」連日満員
11月 千代田館「ユイタバ・ラ」他連日連夜満員
   帝国劇場「伽羅先代萩」他連日満員
12月 本郷座「忠臣蔵」連日満員御礼
大正十四年(1925年)
1月 築地小劇場ジュリアス・シーザー」他連日満員の盛況で日延べ
   ホクホクの芝居大国 歌舞伎も市川も帝劇も満員続き
2月 神田南明座「巴里の女性」満員御礼
   神田シネマパレス「アルト・ハイデルベルヒ」満員御礼
   歌舞伎座「尼将軍」他連日売切れ
3月 歌舞伎座と邦楽座、入場料は高くても大入り
5月 本郷座「堀川」他各等全部売切
9月 大久保キネマ「犠牲」他満員御礼
   富士館「鞍馬天狗」他大好評日延上映
   新橋演舞場伊井蓉峰一座満員御礼
   帝国劇場「オペラの怪人」連日満員御礼
10月 帝国劇場「日蓮上人」他熱狂的大盛況
11月 三友館「覇者の心」満員御礼
   富士館「荒木又右衛門」連日連夜大満員
   キネマ倶楽部「禁断の楽園」他満員御礼
   大東京、阪妻の「雄呂血」大満員
12月 三友館「人間」たちまち満員
大正十五年(1926年) 
2月 本郷座「松竹梅湯島掛額」他連日売り切れ御礼
3月 大東京「修羅八荒」満員御礼
   市村座「大山と家光」他満員御礼
5月 市村座「半七捕物帳」他満員御礼
8月 歌舞伎座「大盃七人猩々」初日満員御礼
   帝国劇場「月形半平太」他満員を続ける
9月 新橋演舞場吉野山道行」他連日大入り御礼
   東京市民の約二割が毎月芝居を見る
12月 歌舞伎座森有礼」連日満員御礼

 

遊舎主人さんの写真 - 写真共有サイト「フォト蔵