和のガーデニング 5

和のガーデニング  5        
正確な生育生態を知ろう
  十二月に入ると、草花の大半は枯れ、地上から消えてしまう。地面に何も無くなると、その上を知らずに踏みつけてしまうことがある。野草の路地植えが難しい理由の一つは、いつ芽が出るかという正確な情報が少ないことである。花の咲く時期や植栽摘期は、ある程度知られているが、生育期間全体についてはあまり関心が持たれない。何種類かの植物を植えた場合、発芽時期が異なることから、先に出た植物が繁茂し、後続の芽の成長を妨げたり、開花時に他の植物が覆ったりすることがある。芽の出る時期は、ヤマユリやキンランは四月に入ってから、場合によっては中旬に芽が出る。それに対し、ユキワリイチゲは、前年の十一月中旬、早ければ初旬に葉が出ている。花の咲く時期が異なるのだから、芽が出る時期も違うのは当然であろう。
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  鉢植ではなく、野草を路地に植えるには、植物の生育生態についてよく知らなければならない。そこで、ユキワリイチゲの植栽例を紹介したい。早春を彩る花として、ユキワリイチゲの名前くらいは知っているだろうが、公園ではあまり見かけない。植物園には所々に植えられているが、花が咲いている時期以外には、ほとんど忘れられているようだ。というのも、草丈が低く花が終われば、他の植物の中に埋没し、消えてしまうからである。
イメージ 1 ユキワリイチゲは、植物の多くが枯れる十一月から芽を出す。寒さには強いようで、表土が凍結しなければ、そのまま年を越す。地味な葉ではあるが、何もない冬の庭には趣を添える。葉は少しずつ生長しているが、蕾を付けるのは二月になってからである。開花は二月末頃からで、三月中旬が見頃で、下旬には散ってしまう。四月に入ると葉が枯れ始め消えてしまう。
  花が満開になる時期に、上部を覆う植物(アマナやバイモなど)を一緒に植えてはならないのは当然である。だが、三月中旬から芽を出す植物を植えれば、同じ場所で次の花を見ることができる。そのような条件を充たす野草として、イカリソウがある。
イメージ 6 イカリソウユキワリイチゲが消えた後に生育し、四月中旬から咲き始め、種類によっては五月にも咲くものがある。そして、それ以降にも花を見たければ、さらに遅れて芽を出すキツリフネを植えれば、七月中下旬から九月末頃まで花を見ることができる。
  なお、これらの植物はいずれも日陰に堪え、乾燥しない場所である必要がある。生育環境として落葉樹の下が望ましいが、葉が密生していなければツバキの下でも可能である。

(以上は、環境緑化新聞http://www.interaction.co.jp/publication/news/  12月15日号掲載)
 
ユキワリイチゲイカリソウキツリフネの組合せ
イメージ 3  実際に植えられている場所は、ツバキの根元である。ツバキは、常緑の高木で、夏は日蔭をつくり、冬は地表の凍結防止に効果的である。ツバキの管理は、病気は少ないものの、チャドクガの発生に注意しなければならない。が、それを除けば取り扱い易い植物である。林床の環境という点では、生育が遅いことから、樹冠下の日照や乾湿などの急激な変化が少ない。また、鑑賞面からも、開花の早いツバキは十二月から咲き始め、種類によっては五月まで咲く。花の色は、白、桃色、赤など多彩で、花形も一重から八重、梅芯咲など、種類も多い。
ユキワリイチゲ
イメージ 4  ユキワリイチゲは、ルリイチゲとも呼ばれ、キンポウゲ科多年草である。草丈は10㎝程度、生育期間はある程度日の当たる場所であるが、休眠時は半日陰の場所が適している。土壌は壌土が適しているが、乾燥しなければ土質は選ばないようだ。この植物の特徴は、関東地方では、前年から葉を出し、四月には消えるというスプリング・エフェメラルである。
  ユキワリイチゲは林床に生育する植物だが、かなりの日当たりの良い場所に生育している例もある。寒い期間に生育することから、病虫害の被害は少なく、活着すれば管理は容易である。花は、3㎝位の大きさで、艶やかではないが、淡い紫色は何とも言えない魅力がある。花形には一重だけでなく他に八重もあり、もつと庭や街路にも植栽してほしい野草である。
  注意点は、多くの植物が繁茂する四月から十一月まで休眠するものの、夏季の根の乾燥と高温は防がなければならないこと。やや湿った場所が適地であるが、急激な環境変化がなければ、根が伸びて増え、種からも繁殖する。移植も適宜試みたところ、七月に移植したが問題なく活着した。ユキワリイチゲは、かなり強い植物である可能性がある。
イカリソウ
イメージ 5 イカリソウは、メギ科の多年草で、草丈は20~40㎝程度、半日陰の場所が生育に適している。冬期に葉が枯れるものと常緑のものがある。イカリソウは、非常に強い植物で、かなりの乾燥に堪え、日蔭でも生育する。移植は容易で、病虫害も少なく取り扱いが易しい。繁殖は地下茎による場合が多く、根の根の繁殖力は比較的強く、株分けは植栽後3年経てば行なえる。
  開花は、種類によって異なるものの三月下旬から五月中旬まで咲く。花の色は、白からピンク、薄紫、黄色もあり、花形も色々ある。また、イカリソウの鑑賞対象は花だけでなく、葉にも愛好者がいる。中には、葉の方に魅力を感じる人もいて、多くの園芸品種がつくられている。イメージ 7
  なお、ユキワリイチゲと混植する際は、ユキワリイチゲの生育・繁殖を妨げないような配慮が必要である。具体的には、イカリソウが密生したら、株分けして量を減らす。十一月に芽が出てきたら、上部の枯れ葉などを刈り取り、日が当たるようにする必要がある。
キツリフネ
  キツリフネは以前取り上げているので、ここでは注意すべき点のみにする。ツリフネソウは一年草なので、前年の種の落ちたところに発芽するので、必ずしも期待する位置に出ないことがある。その場合には、混んでいるところからの移植が必要となる。移植は、10㎝ほど伸びた苗を2・3本ほど行い、活着したらその中から最もしっかりたものを残す。なお、キツリフネは耐陰性があるものの、花つきを良くするにはある程度陽を当てなければならない。