歴史的な連合軍進駐と復員が始まる

江戸東京市民の楽しみ(昭和時代)324

歴史的な連合軍進駐と復員が始まる

 とうとう連合軍の進駐が始まった。連合軍と言っても、アメリカ軍である。かつては、「駆逐米英」と言って、敵対する悪の根源のようなことを、徹底的に国民に植えつけていた。そのアメリカ軍の進駐に、「動揺無用」との記事を掲載する。同じ二面に、アメリカが投下した広島・長崎の原爆被害について記載されるも、生々しい写真は掲載されなかった。二十五日にも、長崎の惨状写真2枚載せ、広島の状況を示し解説している。

 国民には、本格化する復員将兵に「温かい心で」「優しい思遺で迎へよう」などとの対応を盛んに促している。特に、交通機関の優先利用が進められた。

 

八月二十三日

 朝日新聞「武器返納、一部は復員 撤退部隊に温い心で」と促している。「行政機構の再編 概ね戦前復帰 軍需 大東亜省は改廃」を提示。そして、進駐軍に対し「市民の家侵さず 見直された米国兵」と安心感を伝えている。

 二面に「外国兵近づくとも 毅然、冷静に扱へ」と、その心構えを警保局から全国へ、「動揺無用を通達」する記事。進駐前と進駐後に分け心構えを記している。これは、国民に対してなのか、進駐軍に忖度しての指示であろうか。

 東京都は「殖やせ貯蓄、食糧」と、街も身なりも清く粛然と、「戦後の都民かくあれ」と喚起している。その詳細は、「秩序の保持」「食糧の増産」「手持ち金の貯蓄化」「町の清浄化」「服装の厳正」とある。また、都教育局からは「動員学徒(中等)引上げ」「男は援農、女は家庭へ」「夜間校は当分開かぬ」などに触れている。国民生活再建にあたり、教育の必要性を揚げるものの、男は食糧生産、女は治安維持の見地からとしている。

 天気予報・ラジオ番組が掲載される。これで、国民はラジオからの娯楽放送が聞けるようになる。

 この時点になって、「原子爆弾被害地の惨を見る」との見出しで、広島、長崎の被害が掲載された。広島は「全戸数の九割は倒壊」「蚊一匹残さぬ殺戮ぶり」「死者五万二千」などについて、長崎は「横穴壕も蒸し焼き」「死者、行方不明二万三千」など悲惨な状況が記されている。

 高見は、聞いた話として「予備学生上りの若い将校に喧嘩を売ろうとしていて、若い将校などはすり抜けるようにして去って行ったという。水兵上りの年輩の下士官は予備学生上りによほど反感を持ったものらしいこういう機会に爆発するのだ」と、書いている。

 

八月二十四日

 朝日新聞は「終戦処理会議」を設置し「最高戦争指導者会議廃止」を伝える。聯合軍進駐迄の注意事項として、明朝から監視飛行あるとして、人々に「監視飛行に怯えるな」と喚起している。

 二面は、「兵の心は一億の心 他人事ではない」と復員した将兵に対する応対について伝えている。「あんまり粗末にしてくれるなよ、俺だって五年間一生懸命ご奉公してきたんだ」という言葉や、「帰還兵に温かい手をのべよ」との言葉を載せて記している。

 他に、連合軍の内地進駐となった神奈川県民の対応について、「全く静に復す」とある。ただ川崎市の北部では、「川崎に徹夜自警団」が結成されたとの記事もある。

 高見は読売新聞から「負けぶとり」について、「お役所では近頃後始末に忙しい。とりわけ これ等役所に奉職している人々は、倉庫に山と積まれた物資の処分に大童である。今まで欠勤勝だった人までこゝの所急に精励恪勤となられた。近所の娘さんはお役所からのお土産を自分一人で持帰ることが出来ないので、お姉さんやお母さんの応援まで受け目下汗だくである。

 負けて急に物持ちになったこれ等の人々を羨んで、隣の奥さんがおっしゃった『あの人達ほんとに負けぶとりだわね』と。こんな心がけでよいでしょうか。立つ鳥は後を濁さず。火事泥根性はよして下さい。そんなに有り余る品物があったら戦死傷者の遺家族とか戦災者に贈って上げたらどんなに喜ばれるでしょう。これから益々増産に励んで戴かねばならぬ農村の人々に贈ったらお百姓さんはどんなに嬉しいでしょう。みんなこれから苦しまねばなりません。みんな仲良く乏しい物を分け合って一致団結、新日本建設に邁進したいと希うのは私一人ではありますまい。(誠生) ( 読売報知)」を紹介している。

 

八月二十五日

 朝日新聞は、米国はわが国の対応について、「降伏に”十分の誠意” 日本は指導者を温存」していると評価しているとの記事。津島新蔵相は「明年度予算編成の基調 民生安定に重点 財政の緊縮方針を確立」との方針を示す。

 二面に「復員輸送は真心で」と、復員する兵や学徒などのため、優先的に切符の販売、湯茶接待などが呼びかけられた。そのため、一般客の切符発売停止、通勤も遠慮、乗車制限が東鉄から発表される。

 「帝都の人口 残留二百四十万」、戦前は六百五十万人であった。焼跡に一割居住、戸数は微減と報告。

 「治安維持の支柱」として、「自治体を強化活用」「強固な結束へ隣保相扶」の見出しで説明している。治安維持をたもつため自治体の役割として適切な指導をすることと、朝日新聞は、戦中の説教と同じスタンスで、国民に要請している。

 「原子爆弾攻撃による長崎市の惨状」との写真2枚が掲載された。また「広島に取り憑いた〝悪霊〟」との見出しで「一週間後には死亡者倍増」と、被害が拡がる状況や人体に与える影響などを示した。当時の米国放送では、広島は七十五年間、人畜のせいぞんを許さぬ土地となった・・・」と繰り返し宣伝と伝えていたことも掲載している。

 

八月二十六日

 朝日新聞「陸海軍人優渥なる勅諭」として「整斉迅速なる復員 皇軍有終の美を」「民業に就き戦後復興へ」を掲載。大蔵省は「産業資金 融資方針を決定」「退職金、生活資金の 融通円滑に実施」すると。

 二面に「新生日本の教育」について示す。「米国の監視下にも 泰然たれ全学徒 科学の生活化本腰」をとの見出しに、「文化施設に乗り出す」図書館・博物館など、「筋金入りの計画を」社会教育・勤労者教育など、「一掃せよ〝記憶万能〟」その例として羽仁氏の自由学園なども、記載されている。

 大映映画「花婿太閤記」と松竹映画「伊豆の娘たち」の広告。

 高見は読売新聞「視野」から「所蔵物資分配」を、「△軍需関係会社の有様はあまりにも見苦しい。上は重役から下は一工員まで所蔵物資の分取り、分配に命がけで狂奔している。米、砂糖をはじめ食料油、菓子の類まで風呂敷包み、リヤカーでセッセと運搬している。なかにはとり過ぎて田舎へ貯蔵している者すらあるという。

△田園調布に住む私の知人の近所に大詔渙発の十五日からきょうまでトラック一台で昼夜兼行で物資を運搬し夜は夜とて家人が運搬作業の人達と食えや飲めやの大騒ぎを夜中の三時ごろまで続け近所迷惑も甚だしいとの事、情けない日本人である。

△そんなに物資があるならなぜ無一物の戦災者や炎天下に働く農村人に優先配給しないのか。放任している監督当局はなにをしているのか。(読売報知 「祖野」)」と記している。

 以上が全国的な事実であるか、現代になっては検証できないかもしれないが、たぶんそのようなことが公然と行われていたのであろう。このような様は、皇軍有終の美を」とは無関係なのであろうか。敗戦間もないため、混乱が生じるのは当然と、政府や旧軍は無関心で無視しているようだ。無為無策に置かれた国民、人々は自らの生活を確保するため、活動せざるを得ない。なぜ、掠奪や暴動が起きなかったのか、その理由や検証は未だに解明されていない。