江戸の盆栽 6

江戸の盆栽  6
                                                                                                                                                                                                                                                                                                    園芸第一巻第二号 より編集イメージ 1
盆栽(はちうゑ)の値段 5
★貳朱
  貳朱という金額は、今の2万5千円ぐらい、少々高価な植物である。
  「松平班たちばな」は、松平班という斑のある、ヤブコウジ科の「カラタチバナ」。「カラタチバナ」は「百両金」とも呼ばれ、かつては途方もない金額(百両)の付けられた盆栽である。
  「上班近江はらん」は、ユリ科「ハラン」の園芸品種。
  「紀州大戟」。トウダイグサ科の「タイゲキ」で紀州産ということではなかろうか。なお、『本草図譜』には、「しととび大戟  産地・地名 武州多摩郡箕谷」が記されている。
  「純耳草(琉球スベリユヒ)は、わからない。
 「白玖瑰」は、バラ科「マイカイ」の白花であろうか。それとも「ハマナス」の白花であろうか。
 「房州蘭」は、蘭の園芸品種であろうか、わからない。
 「奴天南天」は、メギ科「ナンテン」の園芸品種であろう。
  「裏白」は、ウラジロ科の「ウラジロ」。
 「ルリ深紅三角草」は、キンポウゲ科ミスミソウ」の園芸品種。
  「浅黄福寿草」は、キンポウゲ科フクジュソウ」の園芸品種
 「木香花」は、バラ科の「モッコウバラ」。
  「竹葉延胡索」は、ケシ科「エンゴサク」の園芸品種であろう。
  「紅花附子」は、キンポウゲ科トリカブト」の紅花であろうか。
  「ウンゼウノ津(カキツバタは、「ウンゼウノ津」は不明であるが、アヤメ科「カキツバタ」であろうか。
  「圓葉桂」は、クスノキ科の「マルバニッケイ」ではなかろうか。
  「長實きんかん」は、ミカン科の「キンカン」の変種。
 「ケイマ」は、不明。
  「大葉ほだい樹」は、シナノカ科の「オオバボダイジュ」。
  「爪白星はらん」は、ユリ科「ハラン」の園芸品種。
  「唐細辛」は、中国産のウマノスズクサ科「サイシン」ではなかろうか。
  「美人蕉、桔梗蘭」。「美人蕉」はバショウ科の「ヒメバショウ」であろうが、その後の「桔梗蘭」は意味不明。
  「白寒菊」は、キク科「カンギク」の白花。
 
参朱 
  参朱は今の金額で、3万7千5百円となる。
  「角はしばみ」は、カバノキ科の「ツノハシバミ」。
 「琉球寒なでしこ」は、ナデシコ科の「ヒメハマナデシコ」。
  「濱ナタマメ」は、マメ科の「ハマナタマメ」。
  「みな月」は、ユキノシタ科「ノリウツギ」の変種。
  「タレユエサウ」は、アヤメ科の「タレユエソウ」。
  「青莖杜衡」。「杜衡」はウマノスズクサ科の「カンアオイ」。「青莖」については不明。
  「八重戢(戢に草冠が付く)」。ドクダミ科「ドクダミ」の八重花と思われるがよくわからない。  「紅花商陸」は、ヤマゴボウ科「ヤマゴボウ」の紅花であろうか。『本草図譜』にも「商陸 一種 紅花の物」が記載されている。
  「ちりめんかうじ」は、ヤブコウジ科「カラタチバナ」の園芸品種ではなかろうか。
  「コラン」は、何を示しているかわからない。
  「交趾桂」は、『本草図譜』に「まるばにっけい 一種 をらんだにくけい 交趾桂」とある。なお、『樹木図説』には、「交趾肉桂」はクスノキ科の「センロンニッケイ」とあり、「交趾桂」の正式な名前は、「センロンニッケイ」ではなかろうか。
  「ツハメヲモト」は、ユリ科の「ツバメオモト」。
  「竹葉土茯苓」は、ユリ科の「ササバサンキライ」ではなかろうか。
  「班入ちやぼひば」は、ヒノキ科「チャボヒバ」の園芸品種。
  「唐厚朴」は、『本草図譜』に「ほおのき 唐厚朴・一種」とある。厚朴は生薬名、中国産のモクレン科「ホオノキ」か。
  「使君子」は、原産中国のシクンシ科の「シクンシ」。
  「紅桂」は、『本草図譜』に「いぬがし 春桂 紅桂 丹桂 紅木犀」とある。クスノキ科の「イヌガシ」を「紅桂」と呼ぶらしい。
 「カハクリミ」とあるが、クルミ科の「カワグルミ(サワグルミ)」ではなかろうか。
  「龍脳樹」。フタバガキ科に「リュウノウジュ」という植物があるという。
  「漢種杜仲」は、『本草図譜』に「こくてんぎ 一種 唐杜仲」が記載されている。中国産のトチュウ科「トウチュウ」であろう。生薬、お茶としても飲用される。
  「(奄に草冠が付く)羅木」は、トウダイグサ科の「アンマロク」、ウルシ科の「マンゴウ」、クワ科の「インドボダイジュ」のどれかであろうが、わからない。
  「モミヂヅタ」は、ブドウ科「ツタ(ナツヅタ)」の園芸品種ではなかろうか。
 
壹分 
  「根上り松」、もちろん盆栽で、壹分は今の5万円ということから、この松はそこそこの形をしていたものであろう。
  「宗夕おもと」は、オモトノ園芸品種。
 「漢種槐」は、中国産のマメ科「エンジュ」。
  「蕪荑(中禅寺ケヤキ。『重修本草綱目啓蒙』には「蕪荑」は外来のニレ科「ニレ」とある。また『樹木図説』では「オホミニレ」も「蕪荑」とある。なお、(中禅寺ケヤキ)についてはよくわからない。
  「琉球紫花半夏」はよくわからない。なお、サトイモ科「オオハンゲ」の南方産の変種に「ムラサキオオハンゲ」という植物がある。
 「駿河」は、ラン科の「スルガラン」。
  「唐べに山査子」は、中国産のバラ科「ベニサンザシ」か。
  「長島カウジ」はよくわからない。「カウジ」は、ミカン科の「タチバナ」ではなかろうか。
 「都鳥白底紅」は不明。「都鳥」という園芸品種は、ウメとツバキにある。可能性としては、ツバキの方であるが、よくわからない。
  「蒲桃」は、『本草図譜』に「ふともも 木竹子 蒲桃 葡桃 香果 香花果」とある。フトモモ科「フトモモ」の別名であろう。
 「ヲンノレ」は、カバノキ科の「オノオレ」であろう。
  「(我に草冠が付く)」は、国産のキク科「オケラ」であろう。
 「迎年菊」は、五百文にも記されており、どのように違うか不明。
  「樺一重扶桑花」は、樺色一重のアオイ科「ハイビスカス」。
 
壹分貳朱 
  壹分貳朱は、現代の7万5千円ということになる。 
  「タニモダマ」は、キンポウゲ科センニンソウ」の別名らしいが、よくわからない。
 「富士木(ネムノキ)は、マメ科の「ネムノキ」か。
  「肥皂莢」は、『本草図譜』では、「トウサイカチ」としている。マメ科の中国産「サイカチ」の一種であろう。
  「花蘭(若葉紅白等あり)は、どのような蘭を指しているかわからない。
  「木豆(琉球は、マメ科の「キマメ」ではなかろうか。『樹木大図説』によれば琉球豆とも呼ばれる。
  「柏原福壽草」は、キンポウゲかの「フクジュソウ」の園芸品種。
  「寒牡丹」は、ボタン科の「フユボタン」。
  「メラン」は、ラン科「スルガラン」の一種らしい。
  「ヘゴ」は、ヘゴ科の「ヘゴ」。
  「ツゲマツ」は、ヤドリギ科の「マツグミ」であろう。
  「唐蝋梅」は、ロウバイ科の「トウロウバイ」。
  「鶴蘭」は、ラン科の「ツルラン」。別名「ナツエビネ」ともいう。
  「榕樹」は、クワ科の「ガシュマル」。
  「羅漢まき」(地ぼり)は、マキ科の「ラカンマキ」。
  「桂樹果」はわからない。「チョウセンカラマツ」を「桂樹」と書くことがある。
  「酔芙蓉」は、アオイ科の「スイフヨウ」。
  「琉球棕櫚竹」は、ヤシ科の「カンノンチク」。
  「白コケソテツ」はよくわからない。ソテツ科の植物と思われるが不明。
  「タチバナ」はよくわからない。ヤブコウジ科「カラタチバナ」の類であろうか。