ササユリの群生地を訪ねて

ササユリの群生地を訪ねて白川郷~高山)

 富山空港には定刻より10分ほど早く着陸、連絡バスで富山駅に向かう。所要時間は22分なので、白川郷行きバスの発車時刻には13分の余裕がある、と思っていた。ところがバスを降りると、点滅する信号の先には白川郷行きバスが動いている。強引に走りわたり、バスの前に立ちはだかり、止める。停留所以外での乗降は禁止であるが、バス停から〇mまでの範囲ではOKということに期待した。バスのドアは開き、予約があるかと問われた。もちろんある訳がない。直ぐさま、質問するように乗り込んでしまった。ここで乗り過ごしたらスケジュールは破綻。雨が降りそうなこともあって、何としても、つまずきたくなかった。
イメージ 1 無事白川郷に着くことができ、すぐに高山行きの乗車券を購入した。心配した通り、小雨が降り始めた。梅雨だから仕方ないと、蕎麦を食べて止むのを待つことにした。蕎麦の味はまあまあイメージ 2、値段は観光地価格。白川郷の店は、日本人より外国人に視点を合わせて経営しているようだ。回りを見ると、食べているのは外国人だけ。この量では明らかに不足、さらに何かを食べなければならない。雨が切れて、であい橋から集落の方へ歩き始めると、行き交う人はすべて外国人。最近は日本人も自撮りをするが、撮り方を見れば一目瞭然。長い自撮り棒、頻度が多いだけでなく、他人の存在など眼中にない。
イメージ 3 観光客の少ない白川八幡へ向かい、なるべく裏道をたどりながら荻町城跡展望台へ。前にも来たことのある友人は、十年前に比べて建物が多くなったと。それでも集落のイメージは損なわれず、昔の暮らしぶりを偲ぶことができ、日本の山村文化を伝えている。見ていると、快い郷愁と安堵感に包まれるけれど、実は、苦渋な生活史の重さを感じさせる文化遺産でもある。そのような大切な白川郷を、合掌造りの敷地に入り込み写真を撮りまくる外国人観光客に混じって、あたふたと去ることにした。
 イメージ 4高山行きのバスには、出発前から30人以上が並んでいた。乗車は約1時間20分。その間は、まるで海外旅行をしているような錯覚。車内ではいろいろな外国語が飛び交い、日本人の乗客は我々2名だけである。時々流れる車内放送と外の景色をから、国内旅行であることを再確認した。インバウンドなんて浮かれているけど、訪日は途切れないか。危うさを感じながらも、白川郷のさらなる存続を願うものであった。
 バスは定刻に到着、駅前にあるカントリーホテル高山の二階へ走り込む。フロントは外国人が占めており、ようやくチェックイン。小雨の降る中、郷土料理を求め外国人の少なそうな店を捜す。飛騨高山ならではの料理ということで、朴葉みそ焼きと山菜料理を注文。生ビールを飲みながら山野草の話は尽きないものの、食べ物はすぐに無くなりご飯となった。後から入った客は、二組も我々より先に席を立っている。量だけでなく、味も物足りないので店名は差し控える。時間をもてあまして、伝統的建造物群保存地区を歩く。暗くてよく見えないものの、植えられている植物に自然と目が向く。丹精して育てていて、町並みに相応しい植物が多い。中でも、気になったのが白と紫のテッセンか。たぶんクレマチスではない。住む人の拘りに感心しながら、コンビニに寄り部屋に戻る。
イメージ 5 翌朝、市橋さんから電話、駅前駐車場にいるとのこと。車種と色に加えてナンバーを訪ねると「いちはしさん」と返ってきた。一瞬戸惑ったが、すぐ理解。ササユリ群落への案内を頂く市橋さんは、蘭の研究では実績と権威のある学者。蘭に限らず、植物について、特に山野草の博識を傾聴できるとのこと。まず、高山の宮川朝市を歩き、どのような山野草が出品されているか物色する。ササユリ群生地に着くまでに、路傍の草花を見つけては止まり、道の駅の山野草売店に寄り、野草生産者の温室に入りツバメオモトを450円でイメージ 6イメージ 7購入した。目的地に着くまでに見た植物は、サイハイラン、カキラン、ギンランの他に50種以上。
 ササユリが群生する森は、宇津江四十八滝県立自然公園の東側の一角にある。通称は「花の森」、高山市公式観光サイトによれば「花の森四十八滝山野草花園」とされている。広さは約3ヘクタール、スギ・ブナ・ナラ類・カンバ類・ホオノキなどの林内に、クリンソウ約15万本やササユリ約1万5千本が生育しているとある。その他にも、アジサイ類、ショウジョウバカマミズバショウオミナエシ、アヤメ類など、四季を彩る植物。花の見頃は、クリンソウが5月下旬から6月中旬、ササユリが6月中旬から下旬、アジサイが7月中旬から8月上旬とある。ちょうどクリンソウがササユリに移る時期であるが、今年(6月17日)はクリンソウは終わりに近く、ササユリは見頃であった。
イメージ 8 市橋さんの話によると、クリンソウは新たに植栽したものであるが、種からも増えていると。ササユリは、樹林を間伐したため増えているとのこと。明るい林内、舗装され歩きやすい遊歩道、それでいてあまり人工らしさは感じさせない。除草や剪定などの管理が行き届いているためなのだろう。入園料の代わりに、清掃協力金300円をテントで徴収している。その脇では、草花や種などの販売され、ささやかな対応が感じられた。このような非営利の運営は難しいもので、存続は統率する人の資質にかかっている。さらに魅力的なイメージ 9「花の森」にするための舵取りを期待したい。できれば、セイヨウアジサイキショウブなどを植栽する方向へは進めてほしくない。とは言っても、世間の要望や要請が強ければ、拒否できないだろう。我々が見る限り、周辺に自生する草花だけでも、四季折々に花を咲かせることはできること。加えて、来訪者の感動をより印象的に演出する景観構成、花の見せ方などの「和のガーデニング」を期待したい。そんなことを話ながらのササユリ観賞、3人とも十分に堪能することができた。そして何よりも、天候に恵まれ、暑くもなく気持ちの良い一日を過ごせたことに感謝したい。
★情報(所在-岐阜県高山市国府町宇津江3232-1)                     
アクセス1-JR飛騨国府駅よりタクシーで15分。
アクセス2-途中にある遊湯館へは、JR飛騨国府駅より定期バスあります。遊湯館からは希望があれば花の森まで運行とのこと。(なお、バスは停以外でも、手を挙げれば乗車可能とのこと。※詳細は
http://www.48taki.com/garden/index.html参照。)
ササユリの栽培
 実は、ササユリの栽培に失敗しました。その反省を込めて示します。
 ササユリの栽培は難しいと聞いておりましたが、それならと挑戦。種からは咲くまでに7年ほどかかるということで、球根を買うことにした。鹿沼土で取り巻くようにして地植え、7㎝くらいの深さに植えました。十一月に植え、翌年の六月初めに咲き、美しい花を7日くらい堪能できた。問題はこのあと、特に異常はないので気にせず放置したままであった。これまで、スカシユリコオニユリを育てた経験から、同様に案外簡単な植物と感じた。
 しかし、翌年には芽が出ない。問題は植栽地の環境か。半日陰ではあるが夏期の気温はかなり高温になったのだろうか。その場所は、近くに植えてあるヤマユリより日は当たらず、その先のレンゲショウマよりは明るい。土壌は、前述の通りだが乾燥気味だったのかもしれない。調べると、ササユリは関東地方には自生しない。球根自体の寿命が短く、4~5年とされている。連作に弱く、毎年植え替える必要があるとの記載もある。決定的な原因は不明のまま。
 何の参考にもならないかもしれないが、以上がササユリの栽培顛末である。また、機会があれば再度挑戦したいと思うので、何か助言があればお願いします。