レンゲショウマを訪ねて

レンゲショウマを訪ねて
 関東地方には、東京から日帰りのできるレンゲショウマの群生地がいくつかあります。今年の夏は暑く、少々バテ気味なので、三ツ峠はあきらめて高尾山と御岳山に出かけました。
★高尾山
 最も楽なのは高尾山。東京駅から高尾山口まで1時間15分。そこから歩いてケーブルカー乗り場へ7分。山頂まで乗れば6分と、合わせて1時間半あれば到達できます。なお、この時間は最速で、休日なら混んでケーブルカーは待たなければなりません。ケーブルカーは15分間隔で運転されています。そのため、2時間はかかると思って出かければ、ゆとりがあります。
イメージ 3 ケーブルカーは日本一の急勾配、271mを一気に上がり、耳の痛くなる人もいます。そんな人には、天気がよければ、ケーブルカーと並走するリフトに乗るのもお勧めです。乗車時間は倍の12分かかり、気圧差の変化を多少緩和されます。また、回りの景色を見るにはゆっくりしていた方が楽しめます。さらに、料金は同じで、2人乗りなので他人を気にせず話ながら行くには最適です。
 山上駅からレンゲショウマの生育地(野草園)には3分、ケーブルカーを降りて直ぐです。あまりにも近いので到達感がありません。もっと山の中に咲いていると思って訪れる人もいるでしょう。野草園はさる園と隣り合わせ(料金は両方で420円)になっています。経営上一体化しているのでしょうが、利用者は別々という感じです。かつては人気があったのでしょうが、さる園を目的に訪れる人は少なそう。今は、ビアマウント(
http://www.takaotozan.co.jp/beermnt/)の飲み放題・食べ放題が人気です。展望台から眺めるパノラマは、都心から横浜までの夜景を一望できるので昼から長蛇の列ができます。
イメージ 1 野草園は、亜高山帯植物や高山植物植物が約三百種あると期待が高まります。レンゲショウマは、入り口から入るとすぐに見ることができます。園内の進行指示に従って進むと園内には表示板が点在し、植物園らしい配慮を感じます。キツネノカミソリはちょうど咲いていて、説明は分かりやすいです。すべての表示板がこのようになっていれば、さらに楽しく見ることができるのですが。自然のままにしているのでしょうが、草同士の争い(コンペティション)はある程度コントロールしなければならないと思われます。展示した、見せたい植物が負けて、いくつかは消えかかっているようです。管理費が少なく、手が回らないのでしょうが残念です。
イメージ 2 園内はゆっくり歩いても、30分もあれば全てを見ることができます。八月初旬の花として、レンゲショウマ・キツネノカミソリの他に、キレンゲショウマ、カリガネソウ、イセハナビ、イワタバコ、ウバユリなどが咲いていました。中でもレンゲショウマは、園内で最も目につき、十分に堪能できました。できれば、もう少し視覚的な効果を演出したら、もっと美しく見せることができそうです。それは、野草園全体についても言えることで、四季変化や花と花との組み合わせにもう少し考慮して欲しいです。あまり意図的にすると、自然の感じが損なわれると言われそうですが、そんなことはありません。逆に、現在、ヒメヒオウギズイセン(モントブレチア)やシュウカイドウなど、高尾山の植生と無関係な渡来植物が植えてあるのを見ると違和感を感じます。
 せっかく訪れたのだから、山頂まで歩くのもお勧めです。最近の高尾山は、トレッキングというよりランニングの人が目立ちます。恰好のコースなのでしょう。そのような人につられて急ぎ足で進むと、薬王院までで汗だく。一休みしながら参拝、院内にはレンゲショウマとフシグロセンノウが咲いていました。たぶん、植えたものだろうが、あたかも自然に生育しているように感じました。特にフシグロセンノウは、種が飛んで生えたものと思われる場所に咲いており、印象的です。レンゲショウマとフシグロセンノウを、このような植栽形態で他でも見ることができようになれば最高です。
★御岳山
 御岳山は、東京駅から2時間半、初めての人だと3時間かかると見た方がよいです。東京駅から直接「御嶽」に行く電車はなく、青梅で乗り換えが必要です。青梅行きの特別快速は1時間に1本しかなく、御獄から滝本(ケーブルカー乗り場)へのバスもスムーズに乗れないこともあります。ケーブルカーの乗車時間は6分と短いものの、混雑すると30分待つことがあります。それでも、レンゲショウマは最高に素晴らしいです。
イメージ 4 ケーブルカーを降り、そのまま真っ直ぐ進むと、「レンゲショウマまつり」の幟や飾りがあって、左手に「レンゲショウマの群落地入り口」の看板が見えます。そこから階段を登ると、人が一人歩くのがやっとの道幅、それも急な上り坂を登ることになります。道は、岩がゴロゴロして思うように歩くことはできません、間違ってもハイヒールで訪れないように。足元に気を取られているうちに、レンゲショウマが咲いているのに気づきます。スギ林の中をゆっくり進むと、レンゲショウマの群落が広がります。そこには、丸い玉の蕾から開花した花まで、無数のレンゲショウマがあります。日本一というキャッチフレーズも、まんざら嘘ではないようです。
イメージ 5 この場所は、「富士峰園地北側斜面」と呼ばれ、最もレンゲショウマが群生しています。その数は5万株とされており、集中的に生育しています。なぜ御岳山のこの場所に生育しているか、少々調べましたがわかりません。もし、ご存じ方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。レンゲショウマは、直射日光に当たると枯れてしまいます。そのため、林床に生育するもので、富士峰園地北側斜面に生育している林は、イヌブナ?やナラ類などの落葉広葉樹にアカマツやモミ・ヒノキなども点在しています。また、スギ林内にもレンゲショウマは少しですが生育しています。照度を測定すると、思っていたより明るく2000~5000luxでしました。湿度は測定していませんが、空気は湿った感じで、土壌湿度は高いものと思われます。
イメージ 6 レンゲショウマの群落の中に、咲いているの植物はソバナ、オクモミジハグマ、ヤマジノホトトギス、ヒョドリバナ、タマアジサイなどです。他にも咲きそうな植物があり、キバナアキギリトリカブト、ツリフネソウなど、意外と豊かな植生に驚きました。そして、何より気に入ったのは、自然な感じで見ることができることです。意図的に植えたものではないのだから当然でしょうが、このような植物の組み合わせを、どこか他の場所で再現したいと思いました。案外簡単にできるのではないでしょうか。
イメージ 7 これだけのレンゲショウマですから、大勢の人が訪れるは仕方ないでしょう。そういう自分も、やはりその一人ですが、その混みようは大変です。平日なのに列をなしての見学、休日の混雑が心配されます。すこし混雑から離れ、安産社へと向かいました。そこには、ご神木である安産杉・夫婦杉・子受け檜が荘厳な姿で待ち受けていました。ただ、林床に根が露出して少し心配な気がします。これらの樹木、どうしてこの場所に生育したのでしょう、たぶん植えたものでしょう。もしかして、ヒノキは自然の生育したのかもしれないが、スギは植栽したものでしょう。
 また、レンゲショウマの中を通り、ケーブルカー乗り場へと戻りました。あまり疲れていないので、6分で登った滝本駅・ 御岳山駅間(1.107km、標高差423.6m)を歩くことにしました。比較的ゆるやかな坂道、それも舗装されているので歩きやすいので、大したことはないと急ぎ足で下りました。しかし、調子に乗って大股で歩いたものだから膝に負担、滝本駅に着いたころには少しガクガクし始めました。この道は、江戸時代の初期に整備されたとされており、杉並木の参道です。大木の杉には番号が振られており、千本近くありそうです。一見自然に見える杉林、訪れた人の大半は人工林だとは思わないでしょう。道の林縁にシュウカイドウが咲いていました。このような場所にも、ツリフネソウなど、御岳山に自生する花が増えることを願わずにはいられない