2016-01-01から1年間の記事一覧

『花暦』5

森鷗外のガーデニング 13 『花暦』5 鷗外の『花暦』には、二月十五日から九月十五日までの期間に咲いた68種の植物が登場する。三百坪を超える庭に、サクラを除く、67種の花が記されているが、その他にも数多くの花が咲いたと思われる。『花暦』の花を草と木…

『明治三十一年日記』1

森鷗外のガーデニング 14 『明治三十一年日記』1 鷗外の日記に植物が記されたものとして、『明治三十一年日記』がある。この日記は、一月一日から始まり、十二月二日まで書かれている。その中で、植物に関する記載は二月から十月までで、『花暦』に負けない…

『花暦』4

森鷗外のガーデニング 12 『花暦』4 ・四頁 六月二十三日 金絲桃 「金絲桃」は、オトギリソウ科常緑低木のビヨウヤナギ。漢名は金線海棠。葉は、生薬となる。乾燥させるかあるいは生の葉を煎じつめ、お茶の替わりに飲めば、胆石や結石症に効果があるという…

『花暦』3

森鷗外のガーデニング 11 『花暦』3 ・二頁 四月七日、十日 櫻 鷗外は、七日と十日にサクラの開花を記している。これは鷗外の庭でなく上野の山と向島でのこと。 観潮楼の二階から上野の山が見えたというから、サクラが咲いていた様子を楽しんだかもしれない…

『花暦』2

森鷗外のガーデニング 10 『花暦』2 では、『花暦』に記された花を紹介しよう。 ・一頁 二月十五日 梅 『花暦』に登場するの最初の花は、ウメである。バラ科の落葉樹、紅梅であろう。 この年は、寒かったようで、開花が遅い。明治三十一年の日記によると、…

『花暦』1

森鷗外のガーデニング 9 『花暦』1 ・不思議な花暦 森鷗外が七ヶ月かかって書いたにもかかわらず、全集はもちろん、関連した本や雑誌など、どこにも触れられていない『花暦』がある。『花暦』は半紙四枚に記され、筆跡から見て、鷗外自身が書いたことは間…

「観潮樓」の庭づくり・その2

森鷗外のガーデニング 8 「観潮樓」の庭づくり・その2 観潮樓の庭園は、築山泉水の日本庭園ではなかったが、全体としては和式の庭であった。大きく分けて、南庭、北庭、東庭の三つであるが、それに小さな中庭もあった。 ①主庭となる南側の庭は、横の東西は…

「観潮樓」の庭づくり・その1

森鷗外のガーデニング 7 「観潮樓」の庭づくり・その1 鷗外は明治二十五年一月、千朶山房から北東に約400m先の本郷駒込千駄木町二十一番地(現在・文京区千駄木1-23-4)に転居した。六月になって、隣地の梅林(十九番地)を買い、敷地を三百二十坪…

住まいの変遷(根岸から千朶山房)と植物3

森鷗外のガーデニング 6 住まいの変遷(根岸~千朶山房)と植物3 ⑥根岸の借家 鷗外は、東京での生活にもなれた明治二十二年一月、下谷根岸金杉百二十二番地(後の下谷区上根岸町八十八番地)の借家に入居した。それは、赤松登志子との縁談が持ち上がり、結…

住まいの変遷(千住からドイツ留学)と植物2

森鷗外のガーデニング 5 住まいの変遷(千住~独逸留学)と植物2 ④千住の住まい 明治九年、千住町に出来た区医出張所管理を森静男は、東京府庁から命ぜられた。当初は、小梅村から通勤した。同十一年、東京府足立郡の郡医を嘱託され、橘井堂医院を開業した…

住まいの変遷(津和野から向島)と植物1

森鷗外のガーデニング 4 住まいの変遷(津和野から向島)と植物1 鷗外は、どのような経緯で植物に関心を深めたか、成長の過程を通して見て行きたい。津和野に生れ、上京するなどという住まいの変遷は大きな影響を与えただろう。また、ドイツ留学の経験は、…

鷗外ならではの関心事(『伊澤蘭軒』)

森鷗外のガーデニング 3 鷗外ならではの関心事(『伊澤蘭軒』) ・美しさ 鷗外の植物への関心は、名前にとどまらず様々な事柄について記述している。まず美しさについては、「その三十二」に「紫黄相雑りて奇麗繁華限なし」と、ウツボグサやカンゾウなどとの…

森鷗外の作品と植物1

森鷗外のガーデニング 2 森鷗外の作品と植物1 鷗外の博識は言うまでもないが、特に植物については、当時の専門家に負けないくらいの知識と関心を持っていた。彼は、作品に登場させた植物を自分の目で直に見るか、当時の資料(江戸時代の本草学書や園芸書、…

森鷗外のガーデニング

森鷗外のガーデニング 1 はじめに 森鷗外の趣味がガーデニングであったことは、ほとんど知られていない。だが、彼の書いた小説や戯曲などを読むと、花が大好きであったことに気づく。さらに、彼が遺した日記を見て、ガーデニングに熱中する姿を確認し、私は…

人工林の明治神宮に学ぶ

自然保護のガーデニング 20 人工林の明治神宮に学ぶ 「自然をつくる」という言葉は、三十年も前に本田正次東京大学名誉教授が『自然保護』(N0.93-94)の中で述べている。もっとも当時は自然保護という言葉がようやく社会に知られるようになった時代であり、…

自然を保護した仕組みの崩壊

自然保護のガーデニング18 自然を保護した仕組みの崩壊 江戸から明治への社会体制の変化は、国内のいろいろな仕組みを変えていった。日本の自然は、その影響を大きく受けて今のような状況になったのであるが、政府はその変化を予測できなかった(というより…

植栽地の環境を整える(乾湿)

和のガーデニング3 植栽地の環境を整える 1-2 土壌条件(乾湿) 土壌中の水分は、植物の生育に大きな影響を与えます。水浸し場所から、乾燥した場所まで土壌の条件はいくつかに分けられます。ただ、土壌中の水分が植物に与える影響は、水分が停滞するか入…

植栽地の環境を整える

和のガーデニング 2 1 植栽地の環境を整える 山野草を育てるのに最も重要なのが環境形成です。安定した環境が成立すれば、さほど手を入れなくても山野草は生育します。マンションのベランダだから、裏庭で狭く日当たりが悪いから、などとあきらめている人…

和のガーデニングを始めましょう

和のガーデニングを始めましょう はじめに 日本は、世界で最も草花の種類が豊富な国です。日本ならではの美しい花が四季折々に咲き、日本人の感性を豊かにしてきました。そのような花をもっと身近に鑑賞できることを願って、山野草による和のガーデニングを…