江戸のガーデニング

茶花と花材の植物名その2

茶花と花材の植物名その2 イグサ(イネ科)・・・種名・・・イグサの初見→新撰字鏡900年頃 燈心草=イグサ・・・『生花枝折抄』1773年(安永二年)に記される。 蘭=イグサ・・・『小篠二葉伝』1787年(天明七年)に記される。 イタドリ(タデ科)・・・種…

茶花と花材の植物名その1

茶花と花材の植物名その1 茶会記や花伝書に記された植物名を整理する。茶花や花材として記された名称は、当時の呼び名であり、必ずしも現代名と同じではない。また、同じ植物と思われるものにも、いくつもの名前が書かれている。その上、書かれている名(漢…

『山科家礼記』と『尺素往来』に記された植物

茶花 38 茶花の種類その35 『山科家礼記』と『尺素往来』に記された植物 『群書類従 第九輯』「群書類従巻百四十一」(続群書類従完成会:発行)に編纂された『尺素往来』と早稲田大学図書館『尺素往来 / [一条兼良] [撰]』の『尺素往来』の植物名は、必ずし…

『尺素往来』に記された植物その2

茶花 37 茶花の種類その34 『尺素往来』に記された植物その2 ・「夏花者」 「岩藤」は、マメ科ニワフジとする。 「卯花」は、アジサイ科ウツギとする。 「停春」は、バラ科コウシンバラとする。 「芍薬」は、ボタン科シャクヤクとする。 「薔薇」は、総称名…

『尺素往来』に記された植物その1

茶花 36 茶花の種類その33 『尺素往来』に記された植物その1 次に、『山科家礼記』と同時期に書かれた『尺素往来』にも多くの植物名が記されている。『尺素往来』には、「前栽植物」(庭に植えられた植物名)があげられている。植物は、庭に限定されている…

『山科家礼記』に登場する植物・その2

茶花 35 茶花の種類その32 『山科家礼記』に登場する植物・その2 『山科家礼記』に登場する植物の種類を現代名と当時の名称を示すと以下のようになる。 ・アヤメ(アヤメ科)は、延徳四年1492四月十八日に「シヤウヒ」「アヤメ」とある。 ・イタドリ(タデ…

『山科家礼記』に登場する植物・その1

茶花 34 茶花の種類その31 『山科家礼記』に登場する植物・その1 『華道古書集成』をもとに、花材に使用される植物を十八世紀後半まで見てきた。そこで、『仙伝抄』を初めとする花道書全体で、花材の種類がどのように増えたかを整理したい。ただ、『仙伝抄…

華道書(花伝書)の花材と茶花その9

茶花 29 茶花の種類その26 華道書(花伝書)の花材と茶花その9 『挿花千筋の麓』 前後2巻から成る『挿花千筋の麓』は、入江玉蟾の著作で、明和五年(1768)に刊行されている。花材のリストと共に後巻に図が示され、花材名も記されている。この書は、「挿花…

十八世紀後半の茶花その3

茶花 27 茶花の種類その24 十八世紀後半の茶花その3 十八世紀後半の茶会記は、『茶会記の研究』によれば33程あるが、まとまったものとして見ることができたのは、「川上不白利休二百回忌茶会記」「酒井宗雅茶会記」程度である。この茶会記に記された茶花の…

十八世紀後半の茶花その2

茶花 26 茶花の種類その23 十八世紀後半の茶花その2 十八世紀後半の茶会記として、『茶会記の研究』によれば、播磨姫路藩第二代藩主・酒井宗雅(忠以)によって記された「酒井宗雅茶会記」がある。茶会は、江戸と姫路で217会催されたとされている。そこで、…

十八世紀後半の茶花その1

茶花 25 茶花の種類その22 十八世紀後半の茶花その1 十八世紀前半までの茶会記を見てきて、十八世紀後半の茶会記でも、茶花の種類は大きくは変わらないだろう。使用される茶花の使用頻度は、同じような順になるだろうと思っていた。そのため、これ以上先に…

華道書(花伝書)の花材と茶花その6

茶花 23 茶花の種類その20 華道書(花伝書)の花材と茶花その6 『立花便覧』 『立花便覧』は、『華道古書集成』第二巻の『立華時勢粧』に次ぐ花伝書で、元禄八年(1695)に刊行されている。著者は、「立花便覧序」を書いた松領山であろうが、どのような人物…

華道書(花伝書)の花材と茶花その5

茶花 22 茶花の種類その19 華道書(花伝書)の花材と茶花その5 『立華指南』 『立華指南』は、『抛入花伝書』に続いて『華道古書集成』第一巻に綴られたものである。貞享五年(1688)に刊行されたもので、著者は不明である。「頭書立華指南に就て」には「本…

華道書(花伝書)の花材と茶花その4

茶花 21 茶花の種類その18 華道書(花伝書)の花材と茶花その4 『抛入花伝書』 『抛入花伝書』は、『立花正道集』とは年号では異なるものの、西暦では同年の貞享一年(1684)に刊行された花伝書である。本書は、貞享元年(1681)、中川茂兵衛蔵板と書かれ、十…

華道書(花伝書)の花材と茶花その2

茶花 19 茶花の種類その16 華道書(花伝書)の花材と茶花その2 『百瓶華序』 『百瓶華序』は、『池坊専應口傳』に続いて『華道古書集成』に綴られたものである。タイトルの通り、慶長四年十月十六日に催された「百瓶華会」の序文で、慶長五年に書かれたもの…

十八世紀前半の茶花その3

茶花 17 茶花の種類その14 十八世紀前半の茶花その3 華道と茶花 十八世紀に入り花卉園芸が盛んになったことを述べたが、立花(生花)はそれよりもう少し早く隆盛を迎えていた。立花(生花)と茶花の関係は、無論無関係ということはなく、互いに影響を与えて…

十八世紀前半の茶花その2

茶花 16 茶花の種類その13 十八世紀前半の茶花その2 「槐記茶会記」は『槐記』の中に記された茶会記である。『槐記』は、近衛家煕の侍医である山科道安が家煕の言行を集め、日記として綴ったものである。家熙は、後水尾上皇の孫にあたり、学識に秀でた当時…

十八世紀前半の茶花その1

茶花 15 茶花の種類その12 十八世紀前半の茶花その1 十八世紀にはいると、花卉への関心はさらに高まり、園芸書が数多く刊行された。茶人がそれらの図書をどのくらい参考にしたかはわからないが、茶花の選定に少なからず影響を与えたものと思われる。茶花の…

十七世紀後半の茶花・その2

茶花 14 茶花の種類その11 十七世紀後半の茶花・その2 『茶会記の研究』(谷晃)をもとに、茶花の記載がまとまって登場しそうな十七世紀後半の茶会記を示すと、「三菩提院御記茶会記(149)」、「反古庵茶会(126)」、「仙叟会記(144)」などがあげられる…

十七世紀後半の茶花・その1

茶花 13 茶花の種類その10 十七世紀後半の茶花・その1 十七世紀後半、茶会は以前にも増して催されていたと思われるが、まとまった茶会記は少ないようである。『茶会記の研究』(谷晃)を見ると、茶花が二百以上登場しそうな茶会記は『伊達綱村茶会記』以外…

茶花 十七世紀前半の茶花の捕捉

茶花 12 茶花の種類その9 十七世紀前半の茶花の捕捉 十七世紀前半の茶会記には、『小堀遠州茶会記集成』『古田織部茶書』に加えて『徳川実紀』に456会、『隔蓂記』261会、『江岑宗左茶書』648会、「有楽亭茶湯日記」97会などの茶会記が存在することが『茶会…

十六世紀後半の茶花の捕捉

茶花 11 茶花の種類その8 十六世紀後半の茶花の捕捉 十六世紀後半の茶会を記した茶会記について、これまで示したものの他にも茶花を記した茶会記があるかを調べてみた。『茶会記の研究』(谷晃)よれば、十六世紀には「松屋会記(856)(数字は記された茶会…

『古田織部正殿聞書』の茶花

茶花 10 茶花の種類その7 『古田織部正殿聞書』の茶花 『古田織部正殿聞書 古織公聞書巻之二 聞書五』に記されている茶花について、その初見を示すと以下のようになる。資料としては、『資料別・草木名初見リスト』(磯野直秀)をもとに示す。 ・辛夷=コブ…

十七世紀前半の茶花・古田織部正殿聞書の検討

茶花 9 茶花の種類その6 十七世紀前半の茶花・古田織部正殿聞書の検討 十七世紀(慶長年間)に入ると、茶花の種類は少しずつ豊かになり60種を超えた。最も使用された植物が、ツバキとウメという事実に変わりはないが、その次の植物としてスイセンが多用さ…

江戸時代の椿 その22

江戸時代の椿 その22 ★1850年代(嘉永~安政年間) 『剪花翁伝前編』の椿 『剪花翁伝前編』は、挿し花(生花)の花材361品の栽培法を月別にわけ、花期や栽培の留意点、早出し法などを解説している。この書は、嘉永四年(1851)園芸家・中山雄平によっ…

茶会記から見る椿と梅の使用

茶花 8 茶花の種類その5 茶会記から見る椿と梅の使用 十七世紀前半の茶会記から見られる茶花の傾向から見ると、新しい茶花を茶会に取り入れるより、茶花の基本はツバキとウメ、という決まりをより浸透させた時代ではなかろうか。 茶の湯の花と言えば、真っ…

十六世紀後半の茶花

茶花 7 茶花の種類その4 天文年間から慶安年間までの約百年間に茶花が活けられた茶会は、一千回以上ある。それらの茶会で最も多く使用された花は、ツバキ、ウメである。次いでスイセン、キクと続く。この4種で全体の60%を占めている。特にツバキとウメが…

江戸時代の椿 その21

江戸時代の椿 その21 ・『古今要覧稿』その4 和漢三才図会云椿和字(注・・ネットで表示できない文字は○で記している。) (按に新撰字鏡云椿椛揮三同勅屯反豆波水又云○○○三字豆波木とみえたりその三字棒構櫨は本邦にて造りし新撰の字なりといへども椿杶○の…

慶長から明暦年間までの茶花

茶花 6 茶花の種類その3 慶長から明暦年間までの茶花 天正年間のあと、文禄年間にも新しい茶花が出現した可能性はあるが、茶会記からは見つからなかった。慶長年間に入り『松屋会記』慶長四年(1599)二月廿三日の茶会記に「白ボケ」が記されている。 ボケ…

天文・天正年間年間までの茶花

茶花 5 茶花の種類その2 天文年間までの茶花 まず最初に出現する茶花は、『天王寺屋会記』他会記・天文十八年(1549)正月九日の茶会記に記された「松」である。「松」はマツとしたが、正確を期すれば、マツにはアカマツやクロマツの他に、ゴヨウマツ、タ…